サニブラウン10秒06連発!今日決勝9秒台バトル

男子100メートル準決勝2組、1位通過で決勝進出したサニブラウン(中央)、左は山県(撮影・加藤哉)

<陸上:世界選手権代表選考会兼日本選手権>◇第1日◇23日◇大阪市・ヤンマースタジアム長居

 俺もいるぞ! 15年世界ユース選手権2冠のサニブラウン・ハキーム(18=東京陸協)が男子100メートルで日本歴代6位の10秒06を2本並べ、今日24日の決勝に進出した。4月に出した自己記録を0秒12更新して予選、準決勝ともトップ通過。世界選手権の参加標準記録10秒12も突破した。桐生祥秀(21)山県亮太(25)ケンブリッジ飛鳥(24)多田修平(21)の4人による争いと目された100メートル代表争いに風穴をあけ、日本人初の9秒台に名乗りを上げた。

 サニブラウンが約4時間後の準決勝に向けた前座のような予選の空気を一変させた。追い風は0・4メートル。苦手のスタートで出遅れたが、大きなストライドで中盤から加速。終盤で予選通過を決定的にしても流さなかった。フィニッシュライン脇の速報掲示は「10・03」。会場に10秒05超えの「大会記録です」とアナウンスが流れると、静かに笑った。電光掲示板に表示された正式タイムは10秒06と変わったが「自分でも正直びっくりしている」。日本歴代6位の記録となった。

 追い風0・5メートルの準決勝でも、先行を許した多田を終盤で差し切り、100分の4秒先着した。今季は「200メートルをメインに」と話していたが、100メートルで10秒06を連発。底知れぬ可能性と、予選がまぐれでないことを証明した。決勝に進出した8人のうち、5人が参加標準記録を突破した。大混戦のレースを演出した18歳は「すごい名だたるメンバー。明日の決勝が楽しみです」とにこにこしていた。昨季まで自己記録は10秒22だったが、今季に入って0秒16も短縮した。急激な成長曲線を描く自分自身に期待するのは当然で、9秒台突破も現実味を帯びてきた。

 9月の米・フロリダ大入学まではオランダが拠点。オランダ代表コーチを務める米国人に師事し、五輪で男子3段跳び2連覇中のクリスチャン・テーラー(25=米国)らと練習。上半身と下半身のバランスが改善され、最後までフォームが乱れなくなった。異国の地での1人暮らしに「コンビニが恋しい。セブン-イレブンとかファミリーマート、ローソンとかあったらな」と漏らしながら、世界に目を向けるアスリートと切磋琢磨(せっさたくま)。15年世界選手権に男子200メートルでは史上最年少の16歳で出場し、準決勝に進んだ才能がさらに磨かれ、100メートルでも芽が出てきた。

 今日24日は100メートル決勝の前に200メートル予選を走る。楽ではない条件にも「勝たないと意味がない」。前回大会は左足負傷で欠場し、リオ五輪を逃した。悲劇の夏から1年。新時代の到来を告げる。【上田悠太】

 ◆サニブラウン・ハキーム 1999年(平11)3月6日、福岡県生まれ。ガーナ人の父と日本人の母を持ち、小3で陸上を始める。15年の世界ユース選手権2冠。今春に東京・城西高を卒業。200メートルの自己記録は20秒34。187センチ、72キロ。

 ◆男子100メートルの世界選手権代表選考 代表枠は最大3。<1>派遣設定記録S(9秒89)を突破<2>参加標準記録(10秒12)を突破し、日本選手権優勝<3>派遣設定記録A(9秒98)を突破し、日本選手権で3位以内に入った最上位。<1>~<3>なら内定。これで枠が埋まらない場合、参加標準記録を突破し、日本選手権で3位以内の選手、参加標準記録を突破し日本選手権以外の選考レースで日本人1位かつ日本選手権にも出場した選手、派遣設定記録Aを突破し、日本選手権8位以内の選手、強化委員会の推薦があった選手から選考する。