サニブラウン圧勝「注目されていない中おもしろい」

10秒05の大会タイ記録で優勝するサニブラウン(左から4人目)(撮影・清水貴仁)

<陸上:世界選手権代表選考会兼日本選手権>◇第2日◇24日◇大阪市・ヤンマースタジアム長居◇男子100メートル

 18歳のホープが10秒0台が5人そろう、大会史上まれにみる激戦を制した。サニブラウン・ハキーム(東京陸協)が世界選手権(8月、ロンドン)男子100メートル代表に内定した。追い風0・6メートルの条件下で10秒05の大会タイ記録で初優勝。2日連続で自己記録を更新し、日本人初だけでなく、世界最年少9秒台を視界にとらえた。

 サニブラウン時代の幕開けを予感させる快走だった。多田に先行されるも、中盤で大きなストライドを生かし、トップスピードに入る。上半身が強くなり、フォームが乱れなくなったから雨が降り注ぐ悪条件でも関係ない。前日23日に出した日本歴代6位の自己記録を100分の1秒更新する10秒05。大会前は5番手の位置づけから、2着に0秒11差をつけるぶっちぎりVに「注目されない中で速く走ったらおもしろいと思っていた」と笑った。

 これで初の世界選手権男子100メートル代表に内定した。「ここは通過点と考えていた。世界選手権でいい結果を残せるように練習を積みたい」と風格さえ漂わせた。ボルト(ジャマイカ)やガトリン(米国)らとの対戦も心待ちにする。「背中を追い掛けるのではなく、横で並んで走れたらいい」と自信がみなぎった。

 18歳3カ月18日は平成以降では最年少優勝。ただ、もっと偉大な記録も視野に入ってきた。世界最年少9秒台。現時点ではブロメル(米国)の18歳11カ月3日(9秒97)だ。東京・城西高時代から「9秒58」のボルト超えを目標に掲げる18歳は来年2月8日までに大台を突破すれば、ブロメルの記録を抜く。8月の世界選手権をはじめ、チャンスは多く残されている。日本人初の9秒台突入で陸上界を引っ張る覚悟もある。

 サニブラウン 気にしてても出るものじゃない。でも1人が出せば、どんどん9秒台を出すと思う。自分が第1歩になれたらうれしい。想像でしかないですが、9秒台で走ればすごく気持ちいいんだろうなと思います。スタートがよければ、9秒台にいくかな。

 世界でも10代で9秒台のランナーは、ブロメルや自己記録9秒69を持つヨハン・ブレーク(ジャマイカ)ら3人だけ。今季だけで自己記録を0秒17も縮め、急激な成長曲線を描いている若者には、その資格が十分にある。今日25日はメインと位置付ける200メートル決勝に臨む。優勝者用の取材エリアで「200メートルがあるので、また帰ってきます」と宣言した。03年末続以来の2冠を成し遂げ、覇権交代を証明する。【上田悠太】

 ◆サニブラウン・ハキーム 1999年(平11)3月6日、福岡県生まれ。ガーナ人の父と日本人の母を持ち、小3で陸上を始める。15年7月世界ユース選手権で100メートルと200メートル2冠。同年の世界選手権北京大会は200メートルに同種目の世界最年少16歳で出場し準決勝進出。今春に東京・城西高を卒業し、オランダを拠点に練習。200メートルの自己記録は20秒34。187センチ、72キロ。