日本一サニブラウン!短距離2冠ロンドンへの通過点

男子200メートル決勝 20秒32で100メートルに続き2冠を達成するサニブラウン(右)(撮影・清水貴仁)

<陸上:世界選手権代表選考会兼日本選手権>◇最終日◇25日◇大阪市・ヤンマースタジアム長居◇男子200メートル決勝

 無限の可能性を秘める18歳が大会3日間、主役の座を独占した。前日24日に100メートルを初制覇したサニブラウン・ハキーム(18=東京陸協)が200メートルも自己記録となる20秒32で初優勝した。03年の末続慎吾以来、14年ぶりとなる2冠を達成。100メートルに続き200メートルでも世界選手権(8月、ロンドン)の代表に内定した。ロンドンの舞台では2種目で決勝進出の壮大なプランを思い描いた。

 初日から最終日までサニブラウン劇場だった。表彰台の真ん中には白い歯を見せる18歳がいた。左には飯塚、右には藤光。追い風0・6メートルの決勝で自己記録を100分の2秒更新する日本歴代8位の20秒32で優勝。桐生、山県、ケンブリッジらを倒した100メートルに続き、リオ五輪のメダリストを蹴散らした。「日本一になれたのはうれしい」。日本選手権短距離2冠は14年ぶりだった。

 成長が詰まっていた。前日までの2日間で100メートル3本、200メートル1本を走った。今大会5本目の決勝は「正直、疲労が残っていた」。自分の状態と相談してレースのパターンを変えた。普段は後半勝負型だが序盤から飛ばした。「ラストは足が回らないと思っていた」と言いながらも、中盤のコーナーを曲がった時点でトップに立ち、勝負を決めた。

 万全でなくても勝てるすべ-。それを当時16歳で世界最年少出場だった15年世界選手権北京大会で学んだ。リオ五輪銀メダルのガトリン(米国)と同組の200メートル予選で2着通過のサプライズを起こした。準決勝で敗退。フルパワーで2レースを走った後、激しい疲労に襲われた。翌日、関係者に「決勝に出たとして走れたか?」と聞かれて「走れないですね…」と答えたという。一方でガトリン、ボルトらは100メートル、200メートル、400メートルリレーをこなしていた。世界のトップと戦うためには複数レースをこなすタフさと勝負の引き出しを増やすことも必要と痛感。課題のスタートや序盤の加速力を磨いた。

 あくまで通過点だ。ロンドンをこう見据える。「(日本選手権は)3日間で5本走った。でも世界選手権では200メートルが1本増える」。100メートルと200メートルで予選、準決勝、決勝すべて走れば合計6本。「両方とも決勝にいきたい」と、2種目ともに決勝に進出する青写真を描く。五輪、世界選手権を通じ、決勝に進出したのは100メートルでは32年ロサンゼルス五輪の吉岡隆徳、200メートルでは03年世界選手権パリ大会の末続慎吾しかいない。あっさりと規格外の発言が飛び出すあたりに、日本陸上界の歴史が変わる気配が漂う。【上田悠太】

 ◆サニブラウン・ハキーム 1999年(平11)3月6日、福岡県生まれ。ガーナ人の父と日本人の母を持ち、小3で陸上を始める。15年7月の世界ユース選手権で100メートルと200メートルの2冠。今春に東京・城西高を卒業し、オランダを拠点に練習。187センチ、72キロ。