サニブラウン天性の骨格「骨盤が前傾」で推進力前へ

男子200メートル準決勝2組、20秒43の2着に入り決勝進出を決めたサニブラウン(左端)(撮影・河野匠)

<陸上:世界選手権>◇9日◇ロンドン◇男子200メートル準決勝

 サニブラウン・ハキーム(18=東京陸協)が、世界選手権男子200メートルの史上最年少ファイナリストとなった。準決勝で20秒43の2着となり、日本人では03年大会で銅メダルを獲得した末続慎吾以来14年ぶりの決勝進出を果たした。10日午後9時52分(日本時間11日午前5時52分)の決勝を18歳157日で迎え、05年大会で18歳355日だったウサイン・ボルト(ジャマイカ)を抜いた。

 サニブラウンが世界を驚かせた。号砲への反応速度は0秒193と全3組25人中、最も遅かったが、身長188センチの体格を生かしたストライドで加速。カーブの緩やかな大外9レーンの利点を生かしてスピードに乗った。「最初の100メートル集中してやった」。2番手で直線に入ると、必死の形相で腕を振り、ギアをもう1段上げた。世界歴代2位19秒26の記録を持つヨハン・ブレーク(ジャマイカ)らが猛追してきたが、のみ込まれない。最後はスピードを緩める余裕があった。2着。電光掲示板に順位が映し出されると、右手で「2」を作った。

 「ラッキーって感じです。後半は誰もこなかったので。このままいけるかな~って。実感がないですね。タイムもタイムですし」。6月の日本選手権で出した自己記録を0秒11下回り、決勝進出者では最も遅いタイム(20秒43)にはやや不満げだったが、世界にとどろく偉業には違いない。100メートル、200メートル世界記録保持者のボルトが持つ、この種目の最年少での決勝進出記録を更新。「え? そうなんですか?」と驚きの表情だったが、すぐに真顔になった。「(決勝に)最年少で出たところで戦えないと意味がない」。

 ボルトの200メートルの大会記録を塗り替えた15年の世界ユース選手権に続く“ボルト超え”となった。担当する五味トレーナーは末恐ろしい18歳のスピードの秘訣(ひけつ)について、ある特徴を指摘する。「骨盤が前傾しているんです」。それにより関節周辺の前側にある腸腰筋が発達しやすく、足のパワーを前方に伝えやすいという。「臀部(でんぶ)周り、ハムストリングの発達の仕方もすごい。エネルギーを作り出す中心部分は発達しているが、ふくらはぎなど末端部分は筋肉量が多いわけでなく力を伝えるだけ」。天性の骨格と理想的な筋肉が融合し、爆発力の源になっている。

 東京・城西高時代から「世界最速」を目指すと公言してきた。15年世界ユース選手権では2冠。今年から海外に拠点を置いて走りを見直し、日本の史上最年少代表として出場した2年前の北京大会で阻まれた準決勝の壁を越えた。憧れ続けたボルトに直に挑む機会はなかったが“ボルト超え”を果たした18歳は、今や世界から注視されるスプリンターとなった。【上田悠太】