世陸で苦杯 ファラーが雪辱期す/ダイヤモンドL

<ダイヤモンドリーグ第13戦・チューリッヒ大会展望>

 陸上のダイヤモンドリーグ第13戦ヴェルトクラッセが24日、スイスのチューリッヒで行われる。ダイヤモンドリーグ実施32種目中16種目の最終戦で、今大会の優勝者が年間チャンピオンに決定する。男子5000メートルのモー・ファラー(34=英国)ら、8月前半に行われた世界陸上ロンドンで敗れた選手にとってはリターンマッチにもなる。

 世界陸上最大の番狂わせが男子5000メートルだった。11年テグ世界陸上の1万メートルで敗れたのを最後に、五輪&世界陸上の長距離2種目で勝ち続けてきたファラーが、得意のはずのラスト勝負でムクター・エドリス(23=エチオピア)に苦杯を喫した。

 いつものファラーならあらかじめ集団の人数を絞ってスパートしやすい状況を作るが、優勝記録が13分32秒79の超スローペースにしてしまい、最後の1周まで混戦状態になっていた。外側に出て前に出ようとしたが、選手が多く上手く抜け出せなかったのだ。

 ファラーもそれを認めるが、「私はできることをやった。その日、より強い選手が勝つ。それが陸上競技です」と、優勝したエドリスを称えた。

 来季からはマラソンなどロードレースに転向するため、トラック種目出場はチューリッヒ大会が最後となる。ファラーとしてはエドリスに雪辱し、思い残すことなく新たな道に進みたいところだろう。

 だが、状況はファラー優位とは言い切れない。エドリスが世界陸上以後休養をしっかりとっているのに対し、ファラーは20日のダイヤモンドリーグ・バーミンガム大会の3000メートルを走っている(優勝)。地元英国でのラストランだったのだ。世界陸上もファラーが1万メートルと2種目に挑戦していたのに対し、エドリスは5000メートルだけだった。

 エドリス優位の予想も出ているが、ダイヤモンドリーグはペースメーカーがいるため世界陸上のようなスローペースにはならないだろう。2人の対決は予断を許さない。

 ファラー以外にも、本命と言われながら世界陸上で敗れた選手は多い。

 男子やり投のトマス・レーラー(25=ドイツ)はリオ五輪金メダリスト。今年5月には93メートル90の世界歴代2位、今世紀最高記録を投げていたがロンドンでは4位と敗れた。

 女子3000メートル障害では伏兵的存在だった米国の白人選手、エマ・コバーン(26)が優勝。世界記録保持者でリオ五輪金メダリストのルス・ジェベト(20=バーレーン)は5位、2年前の北京世界陸上金メダルのハイビン・ジェプケモイ(25=ケニア)も3位と敗れた。

 以前の金メダリストたちも意地を見せてくるはずだ。

 ダイヤモンドリーグとしての勝敗が最も注目されるのは、男子棒高跳びだろう。

 世界記録保持者のルノー・ラビレニ(30=フランス)は、ダイヤモンドリーグが発足した2010年から昨年まで、7年連続で年間チャンピオンに輝いている。今季はここまでの累計得点でサム・ケンドリクス(24=米国)にリードを許しているが、今季から年間チャンピオンは最終戦の優勝者と変更された。

 世界陸上を含め今季無敗のケンドリクスの優位は動かないが、百戦錬磨のラビレニが土壇場で底力を発揮する可能性もある。

 ◆ダイヤモンドリーグはIAAF(国際陸上競技連盟)が主催する単日、または2日間開催では最高カテゴリーの競技会シリーズ。2010年に発足し、昨年までは年間総合ポイントで各種目のツアーチャンピオンを決定していたが、今年はファイナル大会出場者を決めるクオリファイリング大会として12大会が実施され、16種目ずつを行うファイナル2大会の優勝者がダイヤモンドリーグ・チャンピオンとなる。各クオリファイリング大会の種目別賞金は3万ドル(1位1万ドル~8位1000ドル)で、各種目は年間4または6大会で実施される。各大会のポイント(1位8点~8位1点)合計上位8人(種目によっては12人)がファイナル大会に進出。ファイナル大会の種目別賞金は10万ドル(1位5万ドル~8位2000ドル)で、年間優勝者には賞金5万ドルのほかダイヤモンド入りトロフィーが贈呈される。出場者はトップ選手に厳選され、ほとんどの種目が予選なしの一発決勝で行われるため、緊張感あるレースがスピーディーに続く。また、オリンピックや世界陸上のように1種目3人という国毎の出場人数制限がないため、ジャマイカ、アメリカ勢が揃う短距離種目や、アフリカ勢が多数出場する中・長距離種目など、五輪&世界陸上よりレベルが高くなるケースもある。