前田穂南GC1号、レース支えたストライドの秘密

レース後、会見に出席した前田穂南(撮影・上田悠太)

<陸上:北海道マラソン>◇27日◇札幌市大通公園発着

 マラソン2度目の前田穂南(21=天満屋)が、20年東京五輪の代表2枠を決めるグランドチャンピオンシップ(GC)出場内定女子第1号となった。優勝時のGC出場権獲得記録を3分以上更新する2時間28分48秒で優勝。東京五輪の代表候補に名乗りを上げた。

 長く細い手足を懸命に前へ動かした。33キロ付近。前田は中盤から先行を許していた野上の背中を捉える。その後は差を広げて、GC出場権を勝ち取った。大阪薫英女学院高では補欠の存在も、天満屋入社3年目で花開き、「目標が達成できた」と笑顔。気温は最高で28・1度まで上がり、コース上の日陰も少なかった。夏マラソンへの自信も深めた。「資格を取って東京五輪でメダルを取りたい」。今後は海外レース挑戦を見据え、大舞台で活躍する青写真を描いた。

 後半の追い上げを支えたストライドの長さには秘密がある。入社前まで過ごした兵庫・尼崎市の自宅では正座禁止だったという。母麻理さん(43)は「母から『アメリカの人が足が長いのは椅子だから』と教えられたので」と理由を説明。冬もこたつを用意せず、骨に無駄な負荷がかからぬように椅子に座って食事した。166センチ、46キロと線は細いが、大食いの一面もある。当時、自宅では家族4人で7合の白米を炊いた。両親と弟が暮らす現在は3合だけ。1人で1日4合を平気で食す、そのエネルギーも走りの源だ。

 この日は麻理さんと父哲宏さん(43)の結婚記念日。2人の新婚旅行も北海道だった。記念の日、土地で快走し、最高の親孝行にもなった。その両親がドラマ「東京ラブストーリー」のファンで、ヒロイン役だった女優鈴木保奈美と同じ読み方の「穂南」と名付けられた21歳は「忘れてました」と苦笑いも「喜んでくれたならよかった」と頬を緩ませた。【上田悠太】

 ◆前田穂南(まえだ・ほなみ)1996年(平8)7月17日、兵庫県生まれ。尼崎北小6年まで1年間ミニバスケットボール部も、学内のマラソン大会で上位進出を機に中学から陸上転向。穂南の字は「優しい子に育って欲しい」との思いが込められ、そのイメージのある穂と南が当てられた。今年1月の大阪国際女子は2時間32分19秒の12位。

 ◆日本陸連の瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーの話 夏のマラソンを元気よく最後まで走りきってくれたのは素晴らしい。前田選手は走り方が柔らかいので、今後伸びそうな感じがある。早くGCに決まった人はどんどん新しいチャレンジをして欲しい。