神奈川大V立役者鈴木健吾、出雲回避の個人合宿成果

両手を広げ、ゴールする神奈川大・鈴木健(撮影・田崎高広)

 神奈川大が20年ぶり3度目の優勝を果たした。20年東京五輪マラソン代表候補のエース鈴木健吾(4年)が最終8区で首位を走っていた東海大を逆転。5時間12分49秒でゴールテープを切った。10月の出雲駅伝を回避し、主将ながら個人合宿に励んだ異例のローテーションで臨み、東海大と青学大の2強とみられた勢力図に風穴をあけた。来年1月2、3日に行われる箱根駅伝は混戦模様となってきた。

 見える背中はどんどん大きくなる。鈴木健は17秒差の2位でタスキを受ける。1分以内なら逆転できる自信があった。今年の箱根駅伝2区で歴代8位の記録で区間賞を獲得した男にとっては、十分すぎる射程圏。東海大の川端を2・5キロ付近で捉えると、5キロすぎから徐々に差を広げた。そこからは1人旅。区間2位、日本人1位となる57分24秒で、両手を広げ、ゴールを駆け抜けた。チームメートから3回胴上げされ「素直にうれしい。仲間がつないでくれた」と笑みを見せた。

 勝つための異例のローテーションだった。6位だった出雲駅伝は出場を回避した。その時、田代マネジャーと2人だけで伊豆大島にいた。12日間の個人合宿。同マネジャーから食事や送迎のサポートを受けながら、450キロを走った。「箱根と全日本でしっかり結果を残すなら、出雲は犠牲にしないといけない」。夏場の走り込み不足で調子が上がらず、大後栄治監督と相談し、導き出された結論。大舞台で勝つ手段とはいえ、3大駅伝初戦を見送るのは葛藤もあった。結果で恩返しするしかなかった。

 3年生から主将の鈴木健を中心にチームは成長を遂げた。5区では越川(2年)が区間賞を獲得するなど5時間12分49秒は、大会記録にあと6秒に迫る歴代2位。古豪復活を印象付けた。97年の優勝も知る大後監督は、当時より純粋な走り込みは「3割少ない」という。減らした分は股関節の柔軟性や体軸の矯正に充てた。「立つ姿勢」も毎朝の練習のうち。耳、肩、くるぶしを一直線で結ぶイメージで立つ。走る前の「歩く」「立つ」という動作も見直した。走るだけの練習では、高速化が顕著な時代に取り残された。小さな積み重ねで低迷を脱した。

 97年に優勝したチームは、翌年の箱根駅伝も制し、2冠を達成した。「ロックオンできた」と鈴木健。19年前の歓喜を再現する。【上田悠太】