正月の箱根駅伝を走る駒大・小原ら東北人選手に注目

サルのポーズで木をつかむ駒大の小原拓未

 「みちのくの陸王」はオレだ! 正月の風物詩、第94回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)が来年1月2、3日に開催される。駅伝をテーマにしたドラマに加え、24日の全国高校駅伝では宮城・仙台育英の女子が23年ぶりに優勝するなど、東北でも大盛況。箱根路を走る東北人の躍動にも注目だ。

      ◇       ◇

 箱根路に、サルが出没する!? 駒大の小原拓未(1年=岩手・花巻市出身)が、上り坂での快走を誓った。小学校時代からの愛称「サル」は、大学に入っても継続。「褒め言葉だと思っているので、気に入っています。箱根といったら山登り。憧れです。サルみたいに駆け上がりたい。最近は東京の街中に出没して話題になっていますけれど、ここにもいますよ~って、走りで伝えたい」とほえた。

 幼少期から遊び場は田畑や山だった。自然に上り坂も“ともだち”となった。一関学院高時代に秋田で開催された男鹿駅伝では、約3・5キロすべてが上りという区間を2年連続で任されたこともある。大学入学後は故障しない体づくりのため、クロスカントリーだけを走った時期もあった。治療院の医師にも「絞れて血管が浮き出てきたのは良い証拠」とお墨付きももらった。無駄な肉もそぎ落とされ、軽快さも増している。

 10月の出雲では1年生ながら5区を任されたが、区間7位と納得していない。「走れない先輩たちがいる責任もあるし、借りは返したい」と、坂のある区間での貢献を目標に掲げる。「将来的には、さらに走力を磨いて5区を上って往路優勝のテープを切りたい。でも今の自分には8区が合っていると思う。遊行寺の坂を、みんなが疲れた時に元気に抜きサル」。8区の16キロ付近から続く上りを、出没ポイントに挙げた。【鎌田直秀】

 ◆小原拓未(おばら・たくみ)1999年(平11)3月19日、岩手・花巻市生まれ。土沢小-東和中-一関学院を経て駒大へ。法学部政治学科。憧れの先輩は、前回5区区間賞の大塚祥平(現九電工)。好きな食べ物は焼き肉。特技はバスケットボール。家族は両親と妹、弟。174センチ、56キロ。血液型A。

<箱根駅伝を走る東北人たち>

 ▼駒大・高本真樹(4年=福島・郡山市出身) 主将として、前年9位からの巻き返しを期す。今季は出雲、全日本と調整失敗で不出場の責任も感じており「箱根は走ってチームを引っ張りたい」。体幹トレーニングや、風呂上がりの柔軟体操を徹底することで、最後の箱根に自信も得ている。「監督さんへの感謝や、後輩たちに何を残せるか。区間賞を目指したい」と、同郷である大八木弘明監督の胴上げを夢見る。

 ▼駒大・堀合大輔(3年=青森・南部町出身) チームNO・1の182センチ長身で、前年10区6位の悔しさを晴らす。寮のトイレでは寝ぼけて頭をぶつけることもあるが、長い足でのピッチ走法が武器だ。昨夏は右足腸脛靱帯(ちょうけいじんたい)炎症で練習不足だったが、今夏は1カ月で約1200キロを走り、調子は上々。「集団より単独走が得意なので復路かなあ」と、11月の全日本6区・区間賞の走りを再現する。

 ▼東京国際大・浜登貴也(4年=岩手・山田町出身) 2年時に見せた5区7位の好走を上回る活躍を誓った。「常に自己ベストを狙うことを心掛けてきた。今回は前半から力を出し切り、良い走りがしたい」と、中継所の小田原からペースを上げるつもりだ。卒業後は電気技術職に就き、競技生活は箱根で最後。「山」田町の浜「登」ゆえに、大志田監督も5区の山登り起用を明言した。

 ▼東洋大・相沢晃(2年=福島・須賀川市出身) 4年ぶり優勝の立役者となる。11月の全日本では1区で区間賞。箱根でも1区を任される可能性が高く「箱根でも区間賞をとらないといけないと思っています。先頭でタスキを渡したい。1区はテレビにもよく映るし、1秒を削り出す走りがしたいです」と全国舞台で名を上げるつもりだ。

 もう1つのイベントに向けても士気は高まる。来年1月28日に行われるアイドルグループ乃木坂46の握手会。「3期生の佐藤楓さん推しです。陸上も好きで、詳しいんです」と笑顔。「活躍して、彼女が自分のことを知ってくれた状態で行けたら、さらに盛り上がりますよね」と目を輝かせた。

 前回大会は年末にノロウイルスに感染し、走れなかった悔しさもある。「ケガもないし、体調も万全です」。箱根の新ヒーローとなる準備は整った。

 ▼東洋大・浅井崚雅(1年=岩手・奥州市出身) プロ野球の米メジャーリーグ、エンゼルス入りが決まった大谷翔平投手の背中を追う。「隣の中学で、実家もすぐ近所です。岩手から世界で活躍する人がいるのはうれしいし、自分も将来はマラソンで五輪に出たい」。11月の全日本では6区16位と振るわなかったが、11月の上尾ハーフで1年生トップの成績。スピードは急上昇中だ。

 ▼東海大・湊谷春紀(3年=秋田・大仙市出身) 左膝の大ケガを乗り越え、ホーム“ラン”を披露する。3冠王の落合博満氏を生んだ秋田工で甲子園出場も夢見たが、陸上転向で素質を開花させた。1年時の箱根では1区抜てきも16位。2年秋から1年以上かかったケガも、ようやく完治。「気持ちで負けない強さは身につきました。2年生は黄金世代といわれますが、僕は地味に走ります」と静かに闘志を燃やした。

 ▼東海大・松尾淳之介(2年=秋田・北秋田市出身) 黄金世代の1人として、初優勝に挑む。10月の出雲では3区4位で優勝に貢献。今季は5000メートルと1万メートルで自己ベストを更新するなど絶好調だ。「アップダウンも苦手ではないし、どの区間でも信頼して使ってもらえる選手になりたい」。試合前日の部屋の掃除が験担ぎ。元日には、心技体をきれいに整えて2度目のタスキをつなぐ。

 ▼順大・山田攻(こう、3年=福島・郡山市出身) 名前通りに「山で攻めます。名前に負けないように頑張ります」と、2年連続の5区に立候補した。昨夏には「山の神」と呼ばれたOBの今井正人(33=トヨタ自動車九州)から「傾斜が違うから1キロごとのタイムは意識するな」と助言も得た。「今回は区間賞、4年で山の神と呼ばれたい」。目標は生まれた時から決まっていた?