山県の勢いでリレー侍Vへ!見えた東京“金”タイム

男子400メートルリレー 37秒85の大会記録で1着となり記念撮影を行う日本チーム、左からケンブリッジ飛鳥、桐生、飯塚、山県(撮影・清水貴仁)

<陸上:セイコー・ゴールデングランプリ2018大阪>◇20日◇大阪・ヤンマースタジアム長居◇男子400メートルリレー

 定位置に帰ってきた。男子400メートルリレーで山県亮太(25=セイコーホールディングス)が第1走者で勢いを付け、日本Aチームを日本歴代3位となる37秒85の優勝に導いた。ジャスティン・ガトリン(米国)や蘇炳添(中国)ら各国のエースと同走でリードをつくった。日本が銅メダルを獲得した昨夏の世界選手権は代表を外れたが、その実力を証明。男子100メートルでも10秒13で日本人トップの2位に入った。

 銀メダルを獲得した16年リオデジャネイロ・オリンピックと同じ侍ポースを決めて競技場に入った。メンバーも同じ飯塚、桐生、ケンブリッジ。1年9カ月ぶりに再結成されたチームで、山県がリオと同じ第1走者を任された。競う相手は100メートル世界王者ガトリン、自己記録9秒99の蘇。その事実をレース前の集合場所で知り「何で1走に来るんだ」と思ったというが「力を見せるところ」と奮い立たせる。リードを大きく広げ、第2走者の飯塚に渡した。日本歴代3位の記録に「いいタイムでビックリしています」と笑顔だった。

 昨年3月に右足首を痛め、状態が上がらず、昨年の世界選手権は代表落ち。満足に練習できない同年春、読んだ本がある。「論語の活学」(安岡正篤著)。現代社会に当てはめながら、孔子の生き方や言葉を紹介するもの。その中で「使命感」について書かれている部分があった。自問した。「練習もきつい、負けたら悔しいことばかり。今、自分が競技をしているのはなぜなのか」。

 悩み抜く中で、自分なりの答えにたどり着いた。感動してもらうこと-。だから今季の目標には日本記録の更新でなく「9秒80」と高い志を掲げた。「誰もが走りで感動を与えられるわけではない。でも僕には、陸上をあまり知らない人に日本人が100メートルで9秒台で走れるんだとか、世界大会の決勝に残れるんだとか、そんな感動を与えられるチャンスがある。そういう風に思った時、生きがいになるのかなと」。1万7500人の万雷の拍手、歓声、笑顔が自らの存在価値の証明だった。

 37秒85はリオ五輪の決勝、予選に続く日本歴代3位だ。日本陸連の土江コーチは、20年東京オリンピックの金へ目標とする37秒台前半の記録が「見えますよね。スタンドで跳び上がってしまいました。個々のスプリントを研ぎ澄ませば、走力が上がる」とうなずいた。強くなり続ける侍。その先陣には山県がいる。【上田悠太】