服部勇馬、日本勢14年ぶりV裏に月間1000キロ

日本歴代8位の好タイム2時間7分27秒でゴールし歓喜の表情でゴールテープを切る服部(撮影・今浪浩三)

<福岡国際マラソン>◇2日◇平和台陸上競技場・香椎折り返し(42・195キロ)

男子マラソン界の好記録ラッシュが止まらない。服部勇馬(25=トヨタ自動車)が日本歴代8位の2時間7分27秒で優勝した。日本勢の優勝は尾方剛以来14年ぶりで、2位だった15年世界選手権銀メダリストのイエマネ・ツェガエ(エチオピア)に1分27秒差をつける圧勝。過去3度のマラソンは35キロ以降で失速したが、4度目の挑戦では35キロ以降にギアを上げた。男子マラソンの日本歴代10傑中、今年だけで4つ目の好記録が誕生した。

表情を変えずに走っていた服部は、最後の直線に入ると帽子とサングラスを取った。スタンドの歓声に1度、右手を振る。白い歯を見せフィニッシュテープを切ると、帽子を投げ上げた。その後、ボクシングのアッパーのように右拳を突き上げ、感情を爆発させた。20年東京オリンピック(五輪)の代表選考会「マラソン・グランドチャンピオンシップ(MGC)」(19年9月)の出場権も獲得。「練習の成果が記録に出たのはうれしい。残り7キロを走ることができればタイムは出ると思っていた」と振り返った。

過去3度のマラソンはすべて35キロ以降で失速。ただ鬼門の「残り7キロ」は強みと変わっていた。35~40キロの通過タイムは14分40秒。「リズムを変えてみようかな」とギアを入れ替えたつもりはなくても、ペースは1キロあたり2分56秒にアップ。36キロすぎからアフリカ勢の2人を一気に突き放す世界基準の強さを見せた。

進化の「キーポイント」とした練習は「ジョグとレースの動きをすべて同じで行う」。スピードの変化はあってもストライドなど体の使い方は同じで、持続させる力を培った。本番3カ月前から40キロ以上の距離走は従来2、3度だったが、今回は8度。月間走行距離も約300キロ増の1000キロとなった。

日本陸連の科学委員会の試算では、大迫が前回大会で出した2時間7分19秒は、気候などの条件を設楽悠太が日本記録(当時)を出した18年東京マラソンに当てはめると、2時間5分40秒前後となるという。今大会は号砲10分前で20・2度。15年選手権金のゲブレスラシエが中間点手前で棄権するなどの悪条件だから、記録の価値は輝きを増す。日本陸連の瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダー(62)は「2時間5分40秒を切るのではないか。末恐ろしい選手が出てきた」と驚嘆した。

東洋大時代からマラソンで東京五輪のメダル獲得を目標としていた。箱根駅伝も「しょせん、関東の1番を決める大会」と位置付けていた男は「大迫さんに比べるとタイムはいまひとつ。まだまだ劣っている」と満足感を心にしまい、先を見据えた。次戦のマラソンはMGCの予定。残り10カ月で最高の準備を整えていく。【上田悠太】

<服部勇馬(はっとり・ゆうま)アラカルト>

◆生まれ 1993年(平5)11月13日、新潟・十日町市

◆経歴 中里中-仙台育英高-東洋大-トヨタ自動車

◆サイズ 176センチ、63キロ

◆血液型 O型

◆自己記録 ハーフマラソン1時間1分40秒、1万メートル28分9秒02、5000メートル13分36秒76

◆箱根駅伝の成績 1年時から順に9区区間3位、2区区間3位、2区区間賞、2区区間賞。弟は東洋大で活躍し、今年の日本選手権5000メートル覇者の弾馬(はずま=トーエネック)

◆給水 ボトル通常1本だが、2本を飲む。経口補水液「OS1」とエネルギー飲料「CCD」。発汗量が多いための対策

◆卒業論文 「トヨタ自動車の課題について」。販売や製造の問題点などを考察

◆好きな食べ物 ウナギ、カニ。「ウナギはここ10日で5日食べました」

◆好きな芸能人 吉瀬美智子