東京国際大「東北の神7」で箱根駅伝初シード狙う

肩を組んで躍進を誓う東京国際大の東北出身6人衆。左から会田、佐藤、相沢、真船、菅原、芳賀(撮影・鎌田直秀)

正月の風物詩、第95回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)が来年1月2、3日に開催される。出場する22大学で、東北出身者のスター候補エントリーは40人。全10区間で、どんな「神」が誕生するのか注目が集まる。【取材・構成=鎌田直秀】

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<東京国際大>

東京国際大はエントリー16人中、東北出身者が6人。前回の箱根10区で区間6位の好走を見せた相沢悠斗(3年=聖和学園)が、全22大学で最大みちのく勢力を引っ張る。創部8年目のチーム目標は初のシード権獲得。初出場だった16年、前回18年ともに最終区までタスキをつなぐことが出来ずに17位。「途切れず前へ」のスローガンを掲げ、大志田秀次監督(56=盛岡市出身)を含めた「東北の神7」が、初快挙に挑む。

相沢は11月に5000メートルの自己記録を更新し、箱根予選会ではチーム2位。この1年でハーフマラソンのタイムも3分30秒以上短縮。高校時代はチーム、個人ともに全国出場はなく、人一倍の努力が結実してきた遅咲きだ。「集団走が得意なので前半区間で長所を生かせると思う。区間5番以内で走れれば良い流れが作れて、シード圏内も見えてくる」。1区、3区を希望した。

今夏には実業団コニカミノルタの北海道合宿に参加し、自己管理や練習への意識が、さらに高まった。課題を明確にし、克服には何をすべきかを徹底。日常生活もケアを含め、陸上中心の生活。「ラスト3キロのスタミナを課題に取り組めた」と大学の夏合宿では1週間250キロをノルマに計1000キロ突破。朝晩の寮食に加え、昼は自身で野菜多めのサンドイッチを作るなど栄養学の勉強も熱心だ。

大好物はレアチーズケーキ。「レース1カ月前の11月末に食べ納めをしてきました」。多い日は5軒以上の店をハシゴして食べ歩く。「今は我慢の時期。箱根で良い走りをして、タスキを最後までつないで、シード権。おいしくケーキを食べることも大切な目標です」と笑顔。“レアチーズの神”は「東京国際大のエースは相沢だと言われる存在になりたい」と、箱根路とケーキ路を駆ける。

◆東京国際大・真船恭輔(3年)“韓流の神”が前回1区20位失速の汚名を返上する。「1区でリベンジしたい気持ちはあるが、今回は復路7区。任された区間でチームのシード権獲得に貢献したい」。練習や試合前の士気は、韓国の女性グループTWICE(トゥワイス)のDVD鑑賞で高める。「ダンスとかを見て頑張れる。とにかくタスキをもらってから2人は最低でも抜きたい」と意気込んだ。

▼東京国際大・菅原直哉(3年=6区希望の“下りの神”)「合宿ではクロスカントリーコース、大学でもゴルフ場を走って足腰を鍛えています。平地より下りが好きです」

▼東京国際大・会田純己(1年=小説好きの“読書の神”は仙台育英時代に高校駅伝6区3位)「緊張せずに走れればいい。自分のいつも通りのペースで走るだけです」

▼東京国際大・佐藤雄志(3年=前回は11番手で補助に回った“雪辱の神”)「悔しい思いをしたので、粘って粘って最後に競り勝ちます」

▼東京国際大・芳賀宏太郎(1年=会社経営が夢の“社長の神”)「1年生なので集団になったら積極的にハイペースで飛び抜けたい」

▼東京国際大・大志田秀次監督(96年に中大をコーチで優勝に導いた“飛躍の神”)「自分たちの走りができればシードを狙えるんじゃないの? という雰囲気にはなっています。今回も青学さんが強く、10区までには多くが繰り上げスタートになると思うので、まずタスキをつながないと結果は出ない」

 

<駒大>

駒大の堀合大輔(4年)は主将として11年ぶり制覇に挑む。チームは10年から7年連続3位以内だったが、自身初の箱根だった2年時に9位。前回は9区を任され区間2位も、12位に終わってシード権を失った。予選会は1位突破して53年連続出場の最低限の責任を果たし「結果はすべて自分たちの実力だった。良い意味でおごりの気持ちが消えた」。全日本では4位に入り、復活の兆し。「出雲の短い距離の練習をしなかったぶん、箱根の長距離に集中できた。最低3位以内、優勝争いもいけると思う」と自信を深めた。

背中で引っ張ってきた。今夏、約1カ月間の長野合宿では、チーム最長距離を走った。1日50キロを走ったこともあり、計1200キロ。「僕にとって役職は良い方向に働いた。キャプテンだからと精神的に強くなれた」。今春には母校・名川中に教育実習。練習不足での不調を脱したのも、同じ東北出身の中村大成(3年)ら下級生に負けたくない思いだった。

青森県から上京後、美容院は東京の新オシャレタウン二子玉川に通う。「今はゆったりめのシャツと、ワイドパンツにはまってます」とファッションリーダーでもある。身長182センチの「オシャレ番長」が、箱根のスターに名乗を上げる。

▼駒大・小原拓未(2年=前回は無念の当日エントリー変更で走れなかった愛称サル)「走れなかったのは信頼されていなかったということ。走れたらサルの意地を見せます」

<東海大>

東海大・松尾淳之介(3年)、「黄金世代」と呼ばれてきた男は、2年連続の悔しさを晴らす。1年で4区12位、前回は5区12位。今年8月に右足首内側に痛みを感じて約2カ月間離脱したが「走れないぶん、バイクや水泳などで弱かった体幹も鍛えられた」と前向きにとらえた。金足農の甲子園準優勝や、卓球で世界一になった張本智和(15)ら、他競技からも刺激を受け「自分も応援される選手になります」と闘志を燃やした。

◆東海大・湊谷春紀(4年)が最後の箱根路で、主将として初優勝を導く。1年で1区16位の大ブレーキ。2年はケガに泣き、前回9区5位。チームは出雲3位、全日本2位と5連覇を狙う青学大の背中も見えてきた。「自分は単独走と後半の粘りが武器。3年間悔しい経験をしてきた思いをぶつけたい」と復路志願。60人を超える部員の思いも背負う。

 

<順大>

3年連続の山だ! 攻める! 順大・山田攻(4年)は前回は5区4位ながら区間新。2年時には区間5位で、総合4位に貢献した。「名前の通り、攻めないとダメなんだと思います。チームに勢い、貯金を作りたい」。同じ福島県出身の今井正人(34=順大)、柏原竜二(29=東洋大)に続く「山の神」となるべく、懸垂逆上がりで鍛えた筋力で駆け上がる。卒業後は警視庁に就職する。

 

<東洋大>

東洋大のイケメンエース・相沢晃(3年)が5年ぶり頂点に挑む。前回は2区で区間3位の箱根デビュー。今季も5000メートルと1万メートルで自己新を更新する好調さ。出雲は1区で2位、全日本では最終8区で区間賞を獲得した。「スピード、スタミナだけでなく、気持ちの面で自信がついた。今回は箱根で区間賞をとれる自信があります」。成長に胸を張り、強気な姿勢を貫いた。

 

<青学大>

青学大・橋間貴弥(4年)は有終の美となるか。前回は最終10区を任され、区間2位の走りで4連覇のゴールテープを笑顔で切った。だが、今季は出雲、全日本ともに不出走。「前回は良い思いをさせていただいたが、指定席はない。状態を上げていきたい」と、まずは10人のメンバー入り争いに意気込んだ。卒業後は一般企業就職が決まり、競技生活は終止符を打つ。