高橋尚子さんに「お前はこれからも輝け」小出氏遺言

弔問した後、涙ながらに話す高橋尚子さん

00年シドニー五輪金メダリストの高橋尚子さん(46)が、女子マラソン界の名指導者・小出義雄さんの死去から一夜明けた25日、千葉・佐倉市内の自宅へ弔問に訪れた。80歳で亡くなった恩師と約1時間対面した後、涙があふれ出た。入院中の小出さんからは「夢をかなえてくれてありがとう」と電話で感謝を伝えられ、最後に言葉を交わした4月18日には「お前はこれからも輝いていけよ」との遺言を授かったと明かした。

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高橋さんは沈痛な面持ちだった。午後1時40分から約1時間。今までの「御礼」「一緒に歩んできた思い出」などと恩師に語りかけた。ただ、いつもと違って目は閉じたままだった。「本当にすぐ目を覚ましそうで…。『高橋です』と言ったら、目を開けていなくても『分かるよ。声で』っていう言葉がいつも返ってきていたので。今日もそうやって目を開けてくれるんじゃないかと思って。すごく苦しい思いになりました」。涙がこぼれ落ちた。

3月下旬。小出さんから電話があった。「俺はあと1日、2日だよ」。最初はいつもの冗談かと思い「何言っているんですか」と返したが、様子が違った。「今までいっぱい走ってくれてありがとな。そして夢をかなえてくれてありがとうな」と感謝を伝えられた。米国にいた高橋さんは「大変なことが起きている」と急きょ、帰国した。それから何度も病院へお見舞いに行き、4月以降は手紙も「7、8通」渡したという。

最後に対面したのは4月18日だった。小出さんの意識もしっかりしていた。「俺もうダメだからさ。お前はこれからも輝いていけよ」と伝えられた。それが遺言となった。高橋さんは「弱い私を育ててくださり、オリンピック、世界記録も出させていただいたのは小出監督のおかげ。教わったことがすごくたくさんある。それを伝えていけるように。教わったことを忘れないようにしていきたいと思います」。その魂を受け継いでいく。【上田悠太】