右代啓欣、10種競技で兄啓祐とともに東京五輪目標

色紙に抱負をしたためた陸上10種競技の右代(撮影・浅水友輝)

<令和ジャンプ>

偉大な兄を超えていく。陸上10種競技で江別市出身の右代啓欣(ひろよし、24=東京陸協)が「令和のキング・オブ・アスリート」を目指す。兄啓祐(32)は同競技の第一人者でロンドン、リオデジャネイロ五輪に出場した。今春からは拠点としていた国士舘大を離れ、自ら指導者を求め歩く競技生活をスタート。過酷な1人旅で、大学入学時に兄と誓った「兄弟で東京五輪出場」の夢に突き進む。

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右代が新たな環境で東京五輪ロードを歩む。「1人の方に教えてもらっても新しい発見はない。指導者だけではなくていろいろな選手からも学びたい」。3月に国士舘大大学院を卒業。兄啓祐とともに練習ができ、設備面でも国内有数の環境を有する同大を離れた。専門性の高い10種競技。個別の種目でのレベルアップを目指し流浪の競技生活を選んだ。

兄は10種競技の日本記録保持者で五輪2大会出場、姉織江もやり投げで18年日本選手権4位のトップ選手。187センチ、82キロ。恵まれた体格で全道中学4種競技で優勝を果たしたが、すんなりときた競技生活ではなかった。進学した札幌日大では環境の変化に苦しみ「熱が入らず(高校2年時に総体)札幌支部で優勝したけど、全国は辞退した」。競技に打ち込めない自分にいらだった。

再び競技に向かえたのは兄姉の存在があったから。兄の紹介もあり高校2年時にケンブリッジ飛鳥らを輩出した名門・東京高に転校。2人暮らしでは姉が食事を作って生活を支えた。高3時には兄がロンドン五輪に出場。「自分もこの舞台に立ちたいという目標が明確になった」。

大学進学後は15年日本学生対校で3位になるなど実績を残した。兄にも「日本記録を抜くならお前だけだ」と素質を認められているが、16年に出した7385点の自己記録は3年間更新できていない。右代は「意識していなくても兄姉に頼っていた、甘えていた部分があった。それを変えたかった」。今春からは自ら他大学や実業団の選手、指導者に教えを請う生活だ。

東京五輪プレシーズンの今年は6月の日本選手権混成など20年を占う大会も控える。「1つ1つの種目での技術力は上がっている。この1年で変われる自信がある」。自らの手で兄弟五輪への道を開拓していく。【浅水友輝】

◆右代啓欣(うしろ・ひろよし)1994年(平6)10月25日、江別市生まれ。江別大麻東中で陸上を始める。札幌日大を経て、東京高では3年時に急性虫垂炎を発症しながら総体に出場。国士舘大3年の関東学生対校優勝、日本選手権混成初出場11位、日本学生対校3位。趣味は映画鑑賞で英俳優リーアム・ニーソン出演作がお気に入り。187センチ、82キロ。体脂肪率は3~4%。