鼻血何の日本新 やり投げ北口単身チェコ修行で成長

女子やり投げで日本新記録の64メートル36で優勝し、笑顔を見せる北口(撮影・前田充)

<陸上:木南道孝記念>◇6日◇ヤンマースタジアム長居◇女子やり投げ

大型ヒロインが東京オリンピック(五輪)へ前進した。女子やり投げで北口榛花(はるか、21=日大)が64メートル36の日本新記録を樹立した。

従来の記録は15年に海老原有希がマークした63メートル80。4投目に自己ベストを2メートル20更新する63メートル58で世界選手権(9月開幕・ドーハ)の参加標準記録(61メートル50)をクリアすると、5投目には日本記録を56センチ上回り、20年東京五輪の参加標準記録(64メートル00)も突破した。五輪、世界選手権の同種目で、戦後初の入賞も見えてきた。

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5投目のやりは、大きな弧を描き、日本記録63メートル80を示す赤のラインを越えた。

飛距離を確認すると、北口は両手を何度も上げ、踊り回るように大喜び。今季世界ランク6位の好記録で、フィールド種目では東京五輪の参加標準記録を突破した日本勢第1号となった。「日本記録をやっと更新できたという気持ちが大きい」と顔を紅潮させた。

ハプニングも笑い飛ばした。まず朝起きたら、「手が真っ赤」と大量の鼻血が噴出。競技前にウオーミングアップをしている時にも再び出血した。鼻にティッシュを詰め、救護室へ急行。「いい意味でリラックスできた。(不発の)保険ができた。記録が出なかったら鼻血のせいにしよう」とポジティブに発想を転換した。3投目までは60メートルに届かなかったが、4投目の前に“もぐもぐタイム”でセブン-イレブンのカステラをチャージ。その効果もあってか、直後に2連続でビッグスローを並べた。

16年5月に日本歴代2位の61メートル38を出し、注目を集めた。ただリオ五輪の参加標準記録に62センチ及ばなかった。気合が空回りし、同年6月に右ひじ靱帯(じんたい)を損傷。記録が伸び悩む時期が続いた。昨年の日本選手権前は精神的に落ち込み、体重も5キロ落ちた。17年春には師事していた09年世界選手権銅メダルの村上幸史が日大を退職し、指導を受けられなくなった。

転機は昨年11月。フィンランドであった世界の指導者や選手が集まり、意見を交換する場に参加した。男女とも世界記録保持者を輩出するやり投げ大国チェコの指導者と「コーチがいない」などの悩みを話し込んだ。「それじゃ東京は出られないかもよ」と心配され「コーチしてくれませんか?」と必死に頼み込んだ。連絡先を交換し、メールで交渉を続け、今年2月には約1カ月単身でチェコへ。リリース前のやりの引き方を下から回すよう改善。女子世界記録を持つシュポタコバからも助言を受けた。助走も6歩から8歩に。ほとんど助走なしで高校総体を制する天性の鉄砲肩に技術も備わってきた。過去2年は「きつい。逃げ回っていた」という10種競技の練習も導入。甘えも捨てた。

志は高い。「65メートル以上を投げれば、世界のメダルのテーブルに上がれる。ゆくゆくはオリンピック、世界選手権で金メダルを獲得できるように頑張りたい。世界記録(72メートル28)を狙える位置にいけたらいい」。まだまだ伸びしろを感じさせる大器が歴史に名を残す。【上田悠太】

▽北口の旭川東時代の恩師・松橋昌巳氏(63=現北翔大外部コーチ) 本人からも連絡がきたけど、日本記録の投てきはスーッと抜けたようなスムーズな投げだった。ここ2、3年はケガや指導者がいなくなるなど順調ではなく、アクシデントを乗り越えてきたことが大きかった。もともと才能はある。東京でメダルを狙うまでいってもらいたい。(2日後に64歳になるので)最高のバースデープレゼントになりました。