サニブラウン、けがとの戦い乗り越え到達した9秒台

サニブラウン(2017年8月9日撮影)

<とっておきメモ>

陸上男子短距離のサニブラウン・ハキーム(20=米フロリダ大)が日本人2人目となる100メートル9秒台をマークした。

米大学南東地区選手権の決勝で9秒99(追い風1・8メートル)を出して優勝。自己記録を一気に0秒06も更新し、大台を突破した。20歳2ケ月での9秒台は世界歴代6位の年少記録。

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サニブラウンの競技人生はけがとの戦いだった。

まず東京・城西高3年だった16年リオデジャネイロ・オリンピック(五輪)の選考を兼ねた同年の日本選手権1週間前。高校総体南関東大会の男子400メートルリレーに第1走者で出場後、人影が少なくなったバックストレートで腰に巻きチューブをつけ、高速の感覚を体に染み込ませる練習をしている最中だった。突如、倒れ込んだ。応急処置を受け、水の入った大きな青いプラスチックのバケツの中に体ごとすっぽりと入れられた。自力で動けず、チームメート10人以上に囲まれて、台車で運ばれた。左太ももの肉離れ。熱望する五輪挑戦を断念するしかなかった。

世界ユース選手権2冠など恵まれた才能に任せ、走っていた自分とおさらばした。焦りを抑え、海外を回り、多くの人の話に耳を傾けた。体の軸の使い方や体重移動など貪欲に学んだ。

17年世界選手権200メートル予選後に右太もも裏に張りが出た。18歳157日と史上最年少で決勝に進むも、その後のシーズンは休養を余儀なくされた。18年5月にも右脚付け根を痛め、走り始めたのは同年8月。脚に負担のかからないリハビリを重ね、バランスよく体を鍛えた。走れない時間、屈辱と向き合い、貴重な成長の糧にした。