400障害の安部3位争いを/ダイヤモンドL展望

安部孝駿(2018年5月20日撮影)

<ダイヤモンドリーグ第2戦・上海大会展望>

陸上のダイヤモンドリーグ第2戦の上海ダイヤモンドリーグ大会が18日、中国・上海市の上海スタジアムで行われる。男子100メートルのクリスチャン・コールマン(23=米国)や女子3000メートル障害のベアトリス・チェプコエチ(27=ケニア)ら、昨年のダイヤモンドリーグ・チャンピオンが13人も出場する。さらには10人が出場する昨年のアジア大会金メダリストが、前年チャンピオンたちに対しどう戦うか。日本からは男子200メートルに高瀬慧(30=富士通)が、男子400メートル障害には安部孝駿(27=ヤマダ電機)が出場する。

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男子400メートル障害で注目の対決が実現する。

昨年46秒98の世界歴代2位をマークしたアブデルラーマン・サンバ(23=バーレーン)と、47秒02の同3位タイのレイ・ベンジャミン(21=米国)が初めて同じレースを走る。

サンバは昨年大きく成長した選手。初めて48秒を切ると、アジア大会金メダルだけでなく、ダイヤモンドリーグでも6連勝とシーズンを通じて快進撃を見せた。46秒台は史上2人目で、現役選手では最高記録である。

対するベンジャミンも昨年、自己記録を1秒31も縮めた急上昇選手。2人の対決がなかったのは、ベンジャミンがNCAA(全米大学体育協会)の試合に出ていたため、ダイヤモンドリーグ出場と両立させられなかったからだ。

2人のベスト記録は0.04秒しか違わないが、サンバが46~47秒台を10レースで出しているのに対し、ベンジャミンの47秒台は2レースしかない。400メートルの自己記録はサンバ44秒60、ベンジャミン44秒31と大きく変わらないが、ベンジャミンは200メートルで19秒99と日本記録(20秒03)を上回るタイムを持つ。

だがダイヤモンドリーグを走ったことのないベンジャミンは、未知の部分が多い。前半から飛ばすタイプなのか、後半追い上げ型なのか。ハードリングは巧みなのか、それともハードリングは不得手で走力だけでタイムを稼ぐタイプなのか。

今後の男子400メートル障害を占う初対決となりそうだ。

男子400メートル障害は、日本の安部にも注目したい。

安部は一昨年自身初の48秒台を出し、世界陸上ロンドンでは準決勝に進出した。昨年は48秒68と記録を縮め、世界ランキングは現在9位につけている。

だが4月のアジア選手権は、49秒74での5位と振るわなかった。冬季に米国で身につけたスピードを生かそうとしたためか、後半型のサンバに勝負を挑むため先行する意識が強すぎたのか、オーバーペースになってしまった。

上海大会では1台目までの歩数を1歩多くして、前半の力を気持ちセーブする戦術で臨む。後半の失速を抑えるパターンで、サンバとベンジャミン以外の選手に勝負を挑んでいく。

48秒台中盤で3位争いに加われば、今秋の世界陸上ドーハでは入賞を現実的な目標とできる。

◆ダイヤモンドリーグはIAAF(国際陸上競技連盟)が主催する単日、または2日間開催では最高カテゴリーの競技会シリーズ。2010年に発足し、2016年までは年間総合ポイントで各種目のツアーチャンピオンを決定していた。2017年からシステムが変更され、ファイナル大会出場者を決めるクオリファイリング大会として12大会を実施し、16種目ずつを行うファイナル2大会の優勝者がダイヤモンドリーグ(年間)優勝者となるチャンピオンシップ形式になった。各クオリファイリング大会の種目別賞金は3万ドル(1位1万ドル~8位1000ドル)で、各種目は年間4~6大会で実施される。各大会のポイント(1位8点~8位1点)合計の上位選手がファイナル大会に進出(種目によって異なり7人または8人、または12人)。ファイナル大会の種目別賞金は10万ドル(1位5万ドル~8位2000ドル)で、年間優勝者には賞金5万ドルとダイヤモンド入りトロフィーが贈呈されるのに加え、今年9月開幕の世界陸上への出場権が与えられる。ほとんどの種目が予選なしの一発決勝で行われるため、緊張感あるレースがスピーディーに続く。また、オリンピックや世界陸上のように1種目3人という国ごとの出場人数制限がないため、ジャマイカ、アメリカ勢がそろう短距離種目や、アフリカ勢が多数出場する中・長距離種目など、五輪&世界陸上よりレベルが高くなるケースもある。