雨男サニブラウン「自分の走りを」好記録気配も無欲

会見場に入るサニブラウン・ハキーム(撮影・栗木一考)

主役はリラックス-。陸上の日本選手権開幕を翌日に控えた26日、男子100メートルで9秒97の日本記録を持つサニブラウン・ハキーム(20=フロリダ)が福岡市内で最終調整した。100メートルのレース日(27日=予選・準決勝、28日=決勝)は雨予報だが、過去2回出場した日本選手権はともに雨だけに「自分のせい」と笑い飛ばした。100メートル、200メートルとも優勝すれば、秋の世界選手権(ドーハ)の代表に内定する。

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緊張感はない。2年ぶりの国内レースにサニブラウンは「楽しみです」といい「練習で積み上げたことをしっかり出すことが目標。他の人は気にせず、自分の走りをできれば満足」。記録への無欲さが、逆に好タイムの期待を抱かせた。

日本記録保持者になったが、気負いとは無縁。「あまり気持ちの部分では変わっていない。10秒で走ろうが9秒台で走ろうが、課題は多い。タイムうんぬんより、いい内容で走れれば」と話す。9秒97で走った時も満点の走りではなかった。中盤以降の過剰なストライド、腕振りなど修正点は多かった。当時を「コーチからは冗談半分で『いくら速く走っても、俺は絶対に課題を指摘する』と言われた」と回想。「いつまでたっても、完璧なフォームで走れることはないかもしれないが、それを直すことで、また速いタイムで走れるのかな」。存在する修正点は記録への余地でもある。

好記録を予感させる理由は会場にも詰まる。昨年3月に張り替えられたタータン(走路)は、桐生の9秒98を生み出したものと同じ。「レヂンエース」という“9秒台タータン”だ。他にも記録が出やすいとされる織田記念国際の会場などでも敷かれている。役者は十分。舞台も整う。

記録を狙う上で天気の崩れは不安材料だ。それでもサニブラウンは「出た日本選手権は全部雨。自分のせいというのもあるのですけど。慣れっこなので。大丈夫だと思います」と笑う。たしかに2冠だった2年前の大会も100メートル決勝は雨。ただタイムは10秒05の自己記録だった。規格外のスプリンターに通説など当てはまらない。【上田悠太】