サニブラウン余裕の10秒05 会場も好記録下支え

男子100メートル準決勝2組を1位でゴールするも、納得のいかない表情のサニブラウン(撮影・鈴木みどり)

<陸上:日本選手権>◇第1日◇27日◇博多の森陸上競技場◇男子100メートル準決勝

役者が違った。男子100メートル日本記録保持者のサニブラウン・ハキーム(20=フロリダ大)は準決勝で出遅れながらも、10秒05の全体トップのタイムで決勝に進出した。

「60%」との自己評価ながら、追い風0・1メートルの微風でも大会タイ記録を出した。大会を運営する福岡陸協は会場のシャッターの開閉で風を調整し、好記録をアシストする構え。9秒台のムードが高まる中、決勝は28日午後8時半、スタートする。

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最後は流す余裕があった。それで刻まれた数字は10秒05。サニブラウンは2着ケンブリッジに0秒15の差をつけた。朝原、山県、2年前の自身も含め過去の大会記録は力を抜かない決勝で生まれていたから、その価値は際立つ。それでもレースを「60%」と表現した。その上で「気持ちよく05で走れている。走りの内容も気持ちも違う」と成長をかみしめた。蒸し暑かったスタジアムも「フロリダの方が全然暑い」と笑った。

豪快に出遅れた。右隣の川上は1歩先にいた。号砲への反応0秒180は最下位。「しっかり音を聞いて出たら、聞きすぎました」と苦笑い。10秒30だった予選はピストル音が想定より早く、反応速度は0秒212だった。集中力を研ぎ澄ます決勝。ピストル音にアジャストできれば、9秒台は現実的な数字となる。

大台突破へ“舞台装置”も整う。福岡陸協はスタートとフィニッシュ側にあるシャッターを開閉することで、スタジアム内に吹く風を調整する構え。スタッフがレース約30分前までに両シャッターのそばに立ち、トランシーバーで連携を取りながら、最適な閉じ具合を探る。八木専務理事は「基本はシャッターを開けた方に向かって風が流れる。ただ時に開いた場所から風が入ってくる。それを考え、うまく開け閉めする」と説明。強すぎる風を制御し、追い風2・0メートルを上回る参考記録になることを防ぐことが目的だが、それは好条件の下支えにもなる。

サニブラウンにとって、国内レースは2年ぶり。会場の盛り上がりを感じ「陸上の人気が上がってきて、うれしい」と笑った。優勝すれば秋の世界選手権(ドーハ)の代表に内定する。決勝へ向け「やるべきことをやればタイムは付いてくる。集中していけば、いろんなものが付いてくる」。今季だけで追い風参考も含め3度の9秒台。自身が示し続ける結果が、日本陸上界の人気にもさらなる光をともす。【上田悠太】