北口榛花「勝ててうれしい」大会新連発で離れ業初V

女子やり投げ決勝の4投目で大会新記録を樹立した北口(撮影・鈴木みどり)

<陸上:日本選手権>◇第2日◇28日◇博多の森陸上競技場◇女子やり投げ

女子やり投げで、北口榛花(はるか、21=日大)が、大会新連発の離れ業で初優勝を飾った。

63メートル68の記録を残し、自身初となる世界選手権(9月開幕、ドーハ)代表に内定した。

「『勝ちたい』と決めて、頑張ってきた試合で勝ててうれしいです」

5月の木南道孝記念で64メートル36の日本新記録を樹立。大きな注目を集める立場となったが「今まで注目されるのはスーパーで歩いている時ぐらい。身長が高くて(179センチ)ジロジロ見られるぐらいで、その時はあんまり見ないで欲しかったですけれど…。今も少し恥ずかしいです。でも、こうやって自分が出ることでやり投げをいろいろな方々に知ってもらえますし、自分の生存確認にもなると思っているので。北海道の先生だったり、家族だったり、友達だったりに『ちゃんとやっているよ』と証明できるので、しょうがないんじゃないかな」と愛嬌(あいきょう)たっぷりに笑った。

競技開始の1投目。博多の空に「いきま~す!」の声が響いた。北口がルーティンとしている大きなかけ声から助走に入った。豪快に右腕を振るうと、やりはぐんぐん伸びる。60メートルラインを超えて、大会記録62メートル36(12年海老原有希)を示す黄色いラインもオーバー。いきなり大会新の62メートル68をたたきだした。

記録を確認すると、両手を振り上げるキュートなしぐさで喜びを示した。1投目で早くも優勝をぐっと引き寄せる“秒殺スロー”だった。

「令和のヒロイン」の勢いは止まらない。4投目でも再びビッグスロー。1投目で樹立した大会新を今度は1メートルもオーバー。63メートル68と記録を伸ばした。北口は両手の指を開いて、自分の顔の前でパンパンと控えめに拍手。柔らかい笑顔とは裏腹に記録の面で完全な「独走」態勢に入った。

大器として将来を嘱望されたが、けがなどに泣かされて、16年リオデジャネイロ五輪は出場できなかった。しかし今年5月6日の木南道孝記念で、5投目に従来の日本記録を50センチ以上も更新する64メートル36をマーク。東京五輪の参加標準記録64メートル00を上回る衝撃の一投だった。今冬にチェコへの短期留学などで開眼。優勝候補筆頭として臨んだ日本選手権でビッグスローを連発した。