サニブラウンVも反省 海外挑戦を今後の道しるべに

男子200メートル決勝 降雨の中、優勝したサニブラウンはほっとした表情(撮影・梅根麻紀)

<陸上:日本選手権>◇最終日◇30日◇福岡・博多の森陸上競技場◇男子200メートル決勝

男子200メートル決勝でサニブラウン・ハキーム(20=フロリダ大)が20秒35(向かい風1・3メートル)で優勝した。

100メートルに続き、2年ぶり2度目となる2冠を達成し、秋の世界選手権(ドーハ)代表に決まった。100メートルとの短距離で2度の2冠は、40年ぶり史上3人目。結果で海外挑戦が正しかったと証明し続け、後に続く高校生らの道しるべになる。

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フィニッシュし、電光掲示板のタイムを確認すると、サニブラウンは顔をゆがめた。20秒35。強い雨が降り、向かい風1・3メートルという悪条件。タイムが出ないのは当然だったが、納得いかない。基準は世界だから。「普通に体力的にきつかった。これを(もっとレベルの高い)ところでやってしまうといけない」と自戒した。前半から思い切り飛ばした。終盤はバテながら腕を大きく振って、2位の小池を0秒13差で制した。

日本記録20秒03の更新、日本人初の19秒台はならなかったが、男子の最優秀選手に選出され、主役を独占した。2年ぶり2度目の2冠達成。2度目2冠は40年ぶり、史上3人目だ。それでも「やることをやっただけ。そんなに特別なことはない」と意に介さない。

東京・城西高を卒業し、海を渡った。異国の高いレベルの環境でもまれ、強くなった自負と誇りがある。

「チャレンジを証明するいい機会になった。自分が成果を見せることで、後に続く高校生、若い人、年上の選手もそうですが、アメリカ、外国などの環境で、もまれるチャレンジができるようになればいい」。

日本の高校生は日本の大学へと進むのが一般的だ。言語の壁、新たな環境へ飛び込むことへ戸惑いなどから、留学を諦める選手もいる。自身が結果を示せば、新たな選択肢を示すことにつながる。それを1つの使命だと感じる。20歳はもう、日本スプリント界の中心だ。「自分が海外に出て、戻って日本選手とも切磋琢磨(せっさたくま)する。リレーでも、よりいい位置が狙えるようになってきた」と語る。フロリダ大のライト・アシスタントコーチは「自分を信じてやっている」と成長の理由を言う。

3度目となる世界選手権へ。前回は200メートル決勝に18歳5カ月の史上最年少で出場したが、20年東京オリンピック(五輪)前年で、今年はレベルがさらに上がる見込み。「どれだけ食い込めるか楽しみ。表彰台に到達するのは、過酷な道のりだと思うが、何とかそこまでねじ込めれば」。その舞台に到達すれば“20秒の壁”も壊しているはずだ。【上田悠太】

◆サニブラウン・ハキーム 1999年(平11)3月6日生まれ、東京都出身。ガーナ人の父と日本人の母を持ち、小3で陸上を始める。15年に世界ユース選手権の200メートルでボルトの大会記録を更新し、100メートルとの2冠を達成。17年春に東京・城西高を卒業しオランダを練習拠点に。同年秋に米フロリダ大入学。今年6月に100メートル日本記録の9秒97、200メートル日本歴代2位の20秒08をマーク。188センチ、83キロ。