びっくり日本新の城山正太郎、北海道で自分貫き成長

男子走り幅跳びで8メートル40を記録した城山(撮影・河野匠)

<陸上:アスリートナイトゲームズイン福井>◇17日◇福井県営陸上競技場◇男子走り幅跳び

驚異的な日本新が生まれた。男子走り幅跳びで城山正太郎(24=ゼンリン)が追い風1・5メートルの3回目に8メートル40を跳び、優勝した。今季の世界ランキング2位で、16年リオデジャネイロ五輪の優勝記録を上回る衝撃的なジャンプで、一躍20年東京五輪のメダル候補に躍り出た。92年に森長正樹が出した従来の記録8メートル25を橋岡優輝(20=日大)が1回目に7センチ上回った。それを城山がさらに更新。27年間破られなかった日本記録は40分間で2度も塗り替えられた。

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金メダル級の衝撃ジャンプが飛び出した。3回目。世界水準の速さでの助走から、城山は腕と足を目いっぱい前に突き出し、着地した。記録を測る中、大歓声がスタジアムを包む。8メートル40。これは今季世界ランク2位で、リオ五輪でも金メダル水準。自己記録を39センチも更新する大サプライズだ。「まさか(8メートル)40にいっているとは思わなかった。条件はよかったが、感覚としては20ぐらい」。信じられない様子だった。

ライバルたちの大ジャンプに闘争心が湧き立った。40分前。橋岡が1回目に自己記録を10センチ更新する8メートル32。92年に森長正樹が樹立した日本記録8メートル25を上回った。さらに東洋大の津波も8メートル23で東京五輪の参加標準記録を突破していた。目標は世界選手権の参加標準記録8メートル17だったが、はるかに凌駕(りょうが)した。

100メートルで芽が出ず、高校1年冬で幅跳びに転向。トップ選手では珍しく、大学は東海大北海道を選んだ。感覚を優先する指導方針の広川龍太郎監督(48)の下、素質が開花し、4年時に8メートルを突破した。卒業後も母校で後輩と一緒に練習で汗を流す。冬場は雪が積もり陸上にとっては不利な条件もある。ライバルから「なぜ北海道にいるの?」と聞かれることもある。だが「今までの方法で順調に伸びてきたから」。そう自分を貫き、成長してきた。ウエートを重視し、地面を蹴る力が増した。先月20日には追い風5・0メートルの参考記録ながら、8メートル32を飛んでいた。そのポテンシャルに追い風が安定する好条件が重なれば、驚きの記録が出てもおかしくなかった。

16年リオ五輪は、紙一重で逃した。代表選考を兼ねた南部記念。雨の中で標準記録を3センチ上回る8メートル15を跳んだが、つま先がわずかにラインを越えてファウル。広川監督から「大学4年で五輪に出てたら満足して引退しちゃうぞ」と言われ「そうですね」とボソッとつぶやいた。今回の記録は正真正銘。次は世界の舞台で、大きく羽ばたいていく。一発屋では終わらない。【上田悠太】

◆生まれ 1995年(平7)3月6日、北海道函館市生まれ

◆競技歴 小学3年、兄光太郎さん(26)の影響で陸上を始める。少年団の函館CRSに加入し、当初は短距離だったが、高校1年冬に走り幅跳びに転向

◆経歴 函館南本通小-函館本通中-函館大有斗高-東海大北海道。17年4月、ゼンリンに入社

◆主な成績 高校3年時に総体北海道予選で優勝。大学2年時は世界ジュニア選手権で銅メダルを獲得。4年時はインカレで優勝。16、18年日本選手権2位

◆趣味 ボウリング。ベストスコアは257

◆サイズ 身長178センチ、体重65キロ

◆血液型 A型

◆年別ベスト 11年7メートル20、12年7メートル31、13年7メートル54、14年7メートル83、15年7メートル70、16年8メートル01、17年7メートル97、18年7メートル98、19年8メートル40