走り高跳び戸辺直人の優勝期待/ダイヤモンドL展望

走り高跳びの戸部直人(2018年5月20日撮影)

<陸上:ダイヤモンドリーグ第13戦:ヴェルトクラッセ大会展望>◇28・29日◇スイス・チューリヒ

今大会と第14戦のブリュッセル大会(9月6日)がダイヤモンドリーグのファイナルで、全32種目を16種目ずつに分けて行い、ファイナルで優勝した選手が年間チャンピオンに決定する。各種目に今季好調の選手が勢ぞろいし、9月27日開幕の世界陸上ドーハ大会前哨戦としても位置づけられる。

チューリヒ大会には男子走り高跳びに戸辺直人(27=JAL)、棒高跳びに山本聖途(27=トヨタ自動車)と日本人2選手も出場する。

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男子走り高跳びの戸辺には優勝も期待できる。

戸辺が2月に室内で跳んだ2メートル35の日本記録は、屋外今季世界最高の2メートル33を上回る。室内のダイヤモンドリーグに相当するワールド・インドア・ツアーにも3勝して、日本人初のツアー総合優勝の快挙を達成した。

戸辺は6月末の日本選手権に優勝して世界陸上代表を決めると、約1カ月半トレーニングに専念する期間を設けた。8月18日のダイヤモンドリーグ・バーミンガム大会で試合に復帰したが、踏み切り足のかかとを痛めたため2メートル19の7位と不本意な結果に終わった。軽傷で第12戦のパリ大会に強行出場することもできたが、ファイナルと世界陸上に備えて大事をとった。

チューリヒ大会が今季のダイヤモンドリーグ各大会と同様に2メートル33以下の争いなら戸辺にもチャンスはあるが、2メートル40前後の争いとなると苦しくなる。

その高さを跳んでくるとすれば2メートル43の世界歴代2位を持つムタス・エッサ・バルシム(28=カタール)だろう。昨年脚の手術をした影響で今季は2メートル27がシーズンベストだが、地元開催の世界陸上に向けて復調が進んでいると難敵になる。

また、自己記録は2メートル36とそれほどではないが、マジェド・エル・デイン・ガザル(32=シリア)は17年世界陸上銅メダリストで、今年4月のアジア選手権も優勝と勝負強い。

バルシムらライバルたちの出来次第でもあるが、戸辺が2メートル35の日本記録を更新すればダイヤモンドリーグ・チャンピオンの快挙を達成できるかもしれない。

男子棒高跳びは盛況で、今季すでに3人が6メートルを跳んでいる。

全米選手権で6メートル06の世界歴代2位を跳んだサム・ケンドリクス(26=米国)、ダイヤモンドリーグで優勝2回、2位2回と勝負強いピョートル・リセク(27=ポーランド)、昨年18歳で6メートル05の世界歴代3位をマークしたアルマン・デュプランティス(19=スウェーデン)で、3人全員が今季6メートル台を2試合で跳んでいる。風に記録が左右されやすい種目だが、コンディションが良ければ6メートルを跳び合うハイレベルの戦いになる。

山本は今季のダイヤモンドリーグ2試合で3位に入った。気象コンディションが悪くても5メートル60を跳ぶなど、底力が上がっている。

気象コンディションが良ければ5メートル83の日本記録更新が期待できるが、強風や雨、低温などコンディションが悪ければ確実に上位に食い込むことで、世界陸上の入賞につなげたい。

男子100メートルは本命不在の戦いになる。

昨年のダイヤモンドリーグ優勝者で、今季もここまでのダイヤモンドリーグ・ポイント1位のクリスチャン・コールマン(23=米国)が、ドーピング規定違反の疑いが出ているため欠場する。

2年前の世界陸上金メダルのジャスティン・ガトリン(37=米国)、パリ大会200メートルで圧勝したノア・ライルズ(22=米国)、25日のマドリードの大会でサニブラウン・アブデル・ハキーム(20=フロリダ大)を抑えて優勝したマイケル・ロジャーズ(34=米国)らが争う。

◆ダイヤモンドリーグはIAAF(国際陸上競技連盟)が主催する単日、または2日間開催では最高カテゴリーの競技会シリーズ。2010年に発足し、2016年までは年間総合ポイントで各種目のツアーチャンピオンを決定していた。2017年からシステムが変更され、ファイナル大会出場者を決めるクオリファイリング大会として12大会を実施し、16種目ずつを行うファイナル2大会の優勝者がダイヤモンドリーグ(年間)優勝者となるチャンピオンシップ形式になった。各クオリファイリング大会の種目別賞金は3万ドル(1位1万ドル~8位1000ドル)で、各種目は年間4~6大会で実施される。各大会のポイント(1位8点~8位1点)合計の上位選手がファイナル大会に進出(種目によって異なり7人または8人、または12人)。ファイナル大会の種目別賞金は10万ドル(1位5万ドル~8位2000ドル)で、年間優勝者には賞金5万ドルとダイヤモンド入りトロフィーが贈呈されるのに加え、今年9月開幕の世界陸上への出場権が与えられる。ほとんどの種目が予選なしの一発決勝で行われるため、緊張感あるレースがスピーディーに続く。また、オリンピックや世界陸上のように1種目3人という国ごとの出場人数制限がないため、ジャマイカ、アメリカ勢がそろう短距離種目や、アフリカ勢が多数出場する中・長距離種目など、五輪&世界陸上よりレベルが高くなるケースもある。