8m当たり前!橋岡優輝がドーハで狙う大ジャンプ

8月の陸上ナイトゲームズ・ イン福井で8メートル32を跳んだ橋岡

走り幅跳び界のプリンスが飛躍を遂げる。日本選手権3連覇中の橋岡優輝(20=日大)は初出場の世界選手権(9月27日~10月6日、ドーハ)で同種目、日本勢初となる入賞に挑む。

8月のナイトゲームズ・イン福井では1本目に8メートル32(追い風1・6メートル)の大ジャンプを見せた。やや助走には詰まり、試技を終えた後は首をかしげた。それでも日大で指導を受ける森長正樹コーチが27年間持っていた日本記録8メートル25を超える日本新の誕生だった。そこに驚きはない。記録更新は時間の問題だと思われていたからだ。

そのナイトゲームズ・イン福井では城山正太郎(24=ゼンリン)が8メートル40(追い風1・5メートル)という世界大会の金メダル級の跳躍を見せ、樹立した日本記録はわずか40分で破られた。しかし主役は譲っても、なお実力を証明したのも事実だった。その試合で橋岡は3回目に8メートル21(追い風1・7メートル)、また最終跳躍の6回目にも追い風2・1メートルの参考記録ながら8メートル27を跳んでみせた。参考記録を含め6回中5回が8メートルを超えた。「どういう助走をすればいいかをつかむことができた。世界選手権でいい結果を出すためにつながっていく試合だった」。高いアベレージを並べるのは、本当の力がないとできない業だ。

端正な顔立ちのジャンパーは大舞台での勝負強さも備える。アジア選手権では当時の自己記録となる8メートル22を跳んで優勝。また昨年は20歳未満で争うU20世界選手権で8メートル03を出し、同種目で日本勢初となる金メダルを獲得した。強心臓に加え、優れる足の感覚に裏打ちされた修正能力が、強さの理由だ。

森長コーチは助走のスピードの成長に目を細める。「この1年でだいぶ上がっては来ている」。大学入学当初は秒速10メートルに達しなかったが、8メートル32を跳んだ時は「(秒速)10・6ぐらい」と、スピードに磨きがかかった。東京・八王子学園八王子高時代の課題は今、世界基準の持ち味に変わっている。

一族も華麗だ。父利行さんは棒高跳びで日本選手権に7度優勝した元日本記録保持者。母直美さんも100メートル障害で高校総体3連覇など幅広い競技での実績を持つ。いとこもサッカーの世代別日本代表に選出されている浦和のDF橋岡大樹だ。大きな才能を秘める大学3年生が、日本が世界で戦えなかった種目で、その存在を知らしめる。

◆橋岡優輝(はしおか・ゆうき)1999年(平11)1月23日、東京・小平市生まれ。さいたま・岸中から陸上を始める。八王子学園八王子高から本格的に走り幅跳びに専念し、3年時は高校総体、国体、日本ジュニア選手権と高校3冠を達成。日本選手権は17年から3連覇中。183センチ、76キロ。