ガトリンがサニブラウンに期待「9・80」は出せる

サニブラウンへ向けて書いたメッセージを持ち、笑顔を見せるガトリン(撮影・上田悠太)

【ドーハ=上田悠太】東京オリンピック(五輪)開幕まで28日で300日、陸上短距離界で熱い視線を浴びるのは世界選手権ドーハ大会で男子100メートルにも出場するサニブラウン・ハキーム(20=米フロリダ大)だ。

前回王者のジャスティン・ガトリン(37=米国)が開幕前に取材に応じ、サニブラウンへの期待や今後へ向けたメッセージを語った。

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もっと成長できるためには-。世界王者はサニブラウンへ向けたアドバイスを聞かれると、こう言った。

ガトリン 彼に言いたいことはシンプルだよ。強く、速く、そして賢く走って欲しいね。

可能性には期待を隠さない。今後、日本記録9秒97をどこまで伸ばせそうか。

ガトリン 9秒80は行けるよ。200メートルも20秒00を切れるのではないかな。

前回大会でサニブラウンは18歳5カ月という史上最年少で200メートル決勝に進出。今大会は100メートルに専念し、同種目の五輪、世界選手権で日本勢が32年ロサンゼルス五輪の吉岡隆徳以来87年間も遠ざかっている決勝進出を期待される。世界王者の立場から見ても、その現実味を感じている。

ガトリン 決勝へ進むことはできる思う。ユース時代から見ているが毎年、進化をしているのが分かる。米国の大学のレベルで日々、取り組み、彼よりも速い選手とも対戦しているのが大きい。日本の大学のことを悪く言うつもりはまったくないが、20年東京五輪、21年世界選手権、24年パリ五輪で活躍するような世界中の未来の代表選手と切磋琢磨(せっさたくま)をしている。それが彼の成長となり、そして9秒台の世界にも慣れてくるから。

テネシー大で100メートル、200メートルで01、02年と全米大学王者に輝き、階段を駆け上がったガトリン。これまでに世界選手権で金3、銀5のメダルを獲得。五輪も金1、銀2、銅2個を持っている。ただ自己記録9秒74の走力だけで栄光をつかんできたわけではない。歴史に名を残すためには「継続性」が重要とする。

ガトリン 大事なのは継続性、コンスタントに同じような結果を出せるか。サニブラウンは日本人2人目となる9秒台で走ったが、メダルを取れるクラスの選手と、そうでない選手の違いは本当に大事な場面で、そのタイムを出せるかだ。

その「継続性」を生み出すためには-。「賢く」がキーワードになる。

ガトリン いい選手が頂点に上り詰めるための成長過程だけれど、陸上の経験、知識を磨いていき、より賢くレースを進めていく。レースをどのように展開していくか。レースパターンを築き上げ、その積み重ねによって、持続的に結果を出せるようになれる。

37歳の今季も9秒87を出したガトリン。成長著しい20歳のサニブラウン。世界選手権、そして東京五輪でも激突するかもしれない。

ガトリン 私が彼と走ることになれば、いいレースをしないと。今後は決勝など上のラウンドで再会してもおかしくないからね。

◆ジャスティン・ガトリン 1982年2月10日、米ニューヨーク州生まれ。テネシー大では100、200メートルの01、02年全米大学王者。五輪は04年アテネ大会100メートル金、200メートル銅、12年ロンドン大会100メートル銅、16年リオデジャネイロ大会100メートル銀メダル。世界選手権は05年ヘルシンキ大会に100メートル、200メートルの2冠を達成し、15年北京大会は100メートル、200メートルともウサイン・ボルトに次ぐ銀メダル。自己記録は100メートルが世界歴代5位の9秒74、200メートルが同6位19秒57。185センチ、79キロ。