競歩山西育てた内田コーチ「美しい歩型」独学で伝授

荒井広宙も育てた愛知製鋼の内田隆幸コーチ

京大卒の金メダリストが誕生した。初出場の山西利和(23=愛知製鋼)が1時間26分34秒で優勝。世界ランキング1位の実力を示し、20年東京オリンピック(五輪)の代表にも内定した。

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競歩界に多くのメダリストを育てた「おじいちゃん」がいる。愛知製鋼の内田隆幸コーチ(73)は「世界一幸せな男ですわ」と笑った。山西だけでなく、50キロで今大会金メダルの鈴木、16年リオ五輪銅メダル荒井広宙も「内田塾」の門下生だ。

自身は高校時代、国体に自転車で出たが、長距離、競歩は「たいした選手じゃない」。指導の原点は約30年前。父として長男隆洋さんを強くするため、競歩の指導を学んだ。それから石川・能美市で中高校生を無償で指導するように。「教え子の活躍が楽しくてね」近所だった鈴木は中高時代、夕方6時に内田コーチ宅を訪れ、指導を仰いだ。いつしか県外からも選手が合宿で集まるように。山西とは高校からの縁。山西が京大卒業後の進路に愛知製鋼を選んだのも、名伯楽の指導を受けるためだった。

「美しい歩型」を第一に教え込まれた門下生は反則が少ない。練習には工夫が詰まる。肩の力を抜くため、ゴルフボールや生卵を手に歩く。腰の出し入れを身に着けるため、物干し竿を肩に背負って歩く。競歩用シューズでなく、ピンのあるスパイクで練習し、踵から接地する感覚を得る。その珍しい練習は独学で、何より情熱のたまものだ。指導のモットーは「ここだよ」。そう自らの胸に2度、拳を添えた。【上田悠太】