寺田明日香 異色ママさんハードラー、家族で五輪へ

ハードルを跳び越える寺田(撮影・西塚祐司)

<東京五輪 がんばりマウス>

陸上女子100メートル障害の寺田明日香(29=パソナグループ、恵庭北)が、家族と一緒に初オリンピック(五輪)を目指している。08~10年に日本選手権3連覇を果たしたが1度は陸上を引退。出産やラグビー転向を経て約6季ぶりに復帰した昨年は9月に日本記録(12秒97)をマークした。進化を続ける1児のママさんハードラーは本番でのファイナリストを目標に掲げ、全力で走る。

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まさか再び五輪のトラックを目指すと思っていなかった。陸上を離れ、結婚、出産を経て一時期はラグビーに転向した。ケガや経験の差を感じて断念したが、それでも長女果緒ちゃん(5)に五輪に挑む母の姿を見せたいと、陸上競技に復帰した。

寺田 東京五輪が決まった13年は陸上をやめた年で自分は出られないんだと寂しい気持ち。その後は家族が増えて、みんなで見に行きたいという思いだった。五輪出場は簡単ではないが、今こうして目指せるのは幸せな環境に身を置いているからと感じている。

陸上競技をいったん離れる前は09年世界陸上(ベルリン)に出場するも、12年ロンドン五輪出場を逃して落ち込んだ。今回が最後かもしれないという東京五輪は夫峻一さん(36)と果緒ちゃんと一緒に目指す。家族の存在で心の持ち方も変わった。

寺田 前は陸上だけだったが、今はたくさんある要素の1つ。昔あった結果を気にする焦りもなく、後悔しないように1日1日大切にしている。出産も経験して精神的にどっしり構えられるようになった。

自分と向き合えるようになった。昔は若さゆえに、VTRは好調時のものしか見なかった。昨年、10年ぶりに出場した世界陸上(ドーハ)では他国選手の研究に没頭した。

寺田 今は他の人の走りも見るし、自分の悪い走りしか見ていない。周囲の意見も聞いたりして考えながら走っていますね。

主婦アスリートとして忙しい日を送る。1日の始まりは家族の朝食を作り、保育園に行く娘の身支度を調えてからようやく練習に向かう。経験しているからこそ伝えたいメッセージがあるという。

寺田 選手は引退後に出産するだけが選択肢じゃないというのも見てもらいたい。あとは私生活の充実が競技の充実につながることもある。メリハリを持って充実させた方がプラスになることもある。

4日、古巣の北海道ハイテクACで今年の初練習を行った。東京五輪の参加標準記録は12秒84。昨年9月にマークした日本記録の12秒97の更新を狙い、4月の織田記念国際(広島)などの大会に出場していく。

寺田 12秒5~6をコンスタントに出せば五輪のファイナリストが見えてくる。頑張って目指しているのはそこ。勝負の年だけど、復帰して感じている陸上の楽しさ、喜びを忘れないでいつも通りに走りたい。【西塚祐司】

◆寺田明日香(てらだ・あすか)1990年(平2)1月14日、札幌市生まれ。札幌平和通小4年から陸上(短距離)を始める。札幌柏丘中1年でジュニア五輪に出場。恵庭北高では高校総体100メートル障害を3連覇。13年に1度現役を引退。16年12月の日本ラグビー協会のトライアウトに合格し、17年1月から日本代表練習生として活動。18年12月にラグビー引退と陸上への復帰を表明し、19年日本選手権は3位。得意料理は炊き込みご飯。血液型O型。家族は夫と1女。168センチ、57キロ。

◆陸上女子100メートル障害の東京五輪への道 出場枠は各国最大3枠。今年6月の日本選手権(大阪)で3位以内に入り、同大会までの対象レースで参加標準記録(12秒84)をクリアした選手が優先的に選出される。6月29日に第1次内定選手を発表予定。