松田瑞生がダイハツ引っ張る/クイーンズ駅伝

ダイハツの松田瑞生

全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝)は22日、宮城県松島町文化観光交流館前~仙台市陸上競技場の6区間(42・195キロ)で行われる。昨年2位のダイハツの注目選手は松田瑞生(25)だ。マラソンの東京五輪代表は逃したが、今はトラックの1万メートルでの代表入りを目指して調子を上げている。「チームが1つになれるのが駅伝」とクイーンズ駅伝に向けて意気込んでいる。

失意の日々から完全に抜け出した。松田は今年1月の大阪国際女子マラソンを2時間21分47秒で走って優勝し、五輪代表3人目に大きく近づいた。その時点で松田は東京五輪を集大成にしようという気持ちになっていた。

東京五輪マラソン代表は19年のMGCで前田穂南(24=天満屋)と鈴木亜由子(29=日本郵政グループ)が決定。3人目の座を大阪国際と3月の名古屋ウィメンズマラソンの2つのレースで2時間22分22秒の派遣設定記録を破った選手が選ばれる規定だった。2時間22分22秒の派遣設定記録は非常にレベルが高いタイムで、大阪国際で優勝した松田の代表入りは確実と思われた。

しかし3月の名古屋で一山麻緒(23=ワコール)が2時間20分29秒で優勝。松田のタイムを上回り、3人目の代表は一山に決まった。松田は3人の代表に不測の事態があった時に備えての“代表候補(従来の補欠)”となった。

現実を受け入れるしかなかったが、気持ちは簡単には立ち直るものではない。3月に行われた代表会見では席上、涙をこらえきれなかった。「そのあとも1カ月くらい、部屋にこもって泣いていました」と振り返る。

しかし「代表選手たちと一緒に、私も東京五輪まで(候補選手として)戦っていきたい」と、気持ちを奮い立たせた。山中美和子監督らのサポートもあり、「1万メートルの五輪代表に入りたいし、マラソンもまだやりたいことがある」と前を向き始めた。“やりたいこと”とは野口みずきさんが持つ日本記録(2時間19分12秒)への挑戦だ。

コロナ禍により試合が行われない期間が続いたが、その間のトレーニングで徐々に元気な走りを取り戻した。7月のホクレンディスタンス網走大会1万メートルで半年ぶりにレースを走った後、9月の全日本実業団陸上1万メートルでは2位の快走。11月に入り、1000メートルを7本前後行う練習の最後の1本で、3秒近く自己新をマークしたという。

クイーンズ駅伝は入社2年目の15年大会から、5大会連続で3区(10.9キロ)を走ってきた。今年の起用区間は未定だが、「チームに良い流れを作れるように頑張り、テレビ画面から元気を届けられる走りをしたい」と意欲を見せている。

ダイハツは17年大会から2位、3位、2位と3位以内を続けている。その間、松田は3区で区間6位、4位、9位。前半の最長区間で区間賞の走りはできていないが、他チームから後れない堅実な走りを披露してきた。松田の走りがチームの総合力が表れる後半での順位上昇を呼び込んできた。昨年のチーム2位も3区終了時の7位から、後半で5チームを抜いて実現したものだ。

今年は、昨年6区(6.795キロ)区間賞の吉本ひかりが引退し、1区(7.0キロ。今年は7.6キロ)を走った大森菜月(26)もケガでエントリーできなかった。苦戦が予想されるが、前回5区(10.0キロ)区間2位で山中監督が「レース勘が良い選手」と評する細田あい(24)が故障から復調したことは朗報だ。また昨年は距離の短い2区(3.9キロ。今年は3.3キロ)を走った竹山楓菜(25)は、今年2月の全日本実業団ハーフマラソンで優勝し長距離関係者を驚かせた。距離の短い区間にも長い区間にも対応できる選手に成長している。

松田は駅伝前の時期としては、これまでで最も手応えを感じている。エースが快走すれば、今年もダイハツは3位以内に食い込んできそうだ。