襷への思いは普遍 選手、監督の言葉/箱根連載3

青学大・神林勇太(20年1月3日撮影)

<コロナ禍の箱根(3)>

見えない敵に翻弄(ほんろう)され、葛藤、苦悩に向き合った選手、監督の言葉は含蓄に富む。取材のやり方も、対面は少数で、画面を通したリモートが中心。そんな中でも、心に刺さる名言、キャラが立つコメントはたくさん生まれた。連載「コロナ禍の箱根」の第3回は、その総集編をどうぞ。年明けまで、じっくりかみしめてください。【箱根駅伝取材班】

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<選手編>

▼青学大・神林勇太(4年)

「駅伝があるか分からない中、4年生は士気を保つの難しく、僕自身もどう頑張ればいいのか、分からない時が続いた。でも4年生が、そんな姿を見せると、下級生はついてきてくれない。駅伝、試合が、あるかないかにかかわらず『かっこいい4年生でいよう』『下級生がついてきてよかったと思えるような4年生でいよう』と学年で話をした。下級生も難しい状況で、しっかり頑張ってくれた」

※常勝軍団を束ねる頼もしき主将。卒業後はサッポロビールに一般就職。箱根がラストランだ。

▼東洋大・西山和弥(4年)

「沿道の応援だと一瞬で通り過ぎてしまうけど、テレビならば、ずっと走りを見てもらえる。苦しくなったら、テレビの前で見てくれている、お世話になった方々のことを思って、全力で走りたい」

※沿道の応援は自粛。ただ画面越しの人を思う。

▼城西大・菊地駿弥(4年)

「けがでメンバー争いに絡めていない。そんな選手にも、注目をしていただけると、やる気が上がると思いますので、よろしくお願いします。みんなと一緒に強くなりたいんです」

※1万メートル28分8秒25と好走し、取材を受けた後、報道陣へお願い。主将として仲間のことを考えての言葉。

▼神奈川大・井手孝一(4年)

「山を1人で登り続けるのは、とてもきつかった。この苦しさは後輩に味わって欲しい(笑い)。今回の希望は4区。3、5区は大学歴代記録を出したので、4区でも出したい」

※前回は5区6位と好走も、2年連続は拒否。やっぱり天下の険は大変…。

▼駒大・鈴木芽吹(1年)

「2区(希望)の理由は、今の駒沢は田沢さん頼みでは勝てない。自分が2区を走って、田沢さんの圧倒的な力を他の区間で生かしたい。4区を希望したのは地元の熱海が近いから」

※結局、大八木監督は大エースを花の2区に指名しましたが…1年生らしからぬ大物ぶりと、1年生らしいコメントが交錯。

▼関東学生連合・杉浦慧(慶大3年)

「慶応生って負けた時に、偏差値では勝っているからと、マウントを取りがちなんですよ。慶応にいるから文武両道とも言われる。でも、僕たちが戦っているのは陸上の世界。箱根に出るためには、走る才能を見いだされたスポーツ推薦の人と戦わないといけない。文武両道よりも、走った結果を見ていただきたい」

※次は慶大の仲間と箱根を走りたい。チームの意識改革を進めている。

<指揮官編>

▼青学大・原晋監督(53)

「コロナ禍で分断社会になっている。さまざまな偏見、差別もあった。会いたくても、会えない故郷の仲間、彼女、彼氏もいたことでしょう。つながりが薄れている。絆を大切にし、レースに挑みたい。箱根を通して、皆さんに元気と勇気、そして絆を取り戻せるようにしていきたい」

※箱根は「絆大作戦」を掲げる。寂しき時代が早く終わること願う。

▼帝京大・中野孝行監督(57)

「世間の皆様に分かってもらいたい。彼ら(学生)が経済を動かしてもいいんじゃないかと。箱根をやることによって、東京五輪もやれる光が見える。彼らの役割は、ただスポーツをやっているだけじゃない」

※スポーツの熱狂は、世の中に光を与える。

▼東洋大・酒井俊幸監督(44)

「沿道の応援は自粛ですが、どこかで絶対に見てくれていることには変わりない。映像からも伝わる鉄紺らしい走りを見せるという意気込みで、全員がスタートラインに立ちたい」

※前回は10位で、11年間守っていた3位以内から陥落。再び輝けるか。

▼順大・長門俊介監督(36)

「順天堂の関係者の中にも、多くの医療従事者の方がいます。コロナ禍において最前線で闘っている方に、少しでも勇気や感動を与える戦いができれば」

※感謝の思いを深く胸に刻み、たすきをつなぐ。

▼山梨学院大・飯島理彰監督(49)

「勝ち続けるのも美学ですが、どん底を知った者がはい上がっていくのもいい。山梨学院がはい上がっていくのを注目してください」

※前回は33年続いていた本戦出場が途絶えた。屈辱からの復活はドラマになる。

▼日体大・玉城良二監督(59)

「男子の方がリラックスして指導できる。変な話、下ネタで笑いを取れたりするからね」

※7月に監督就任。その前は長野東高の女子を指導しており、男子と女子の指導の違いを聞かれて。人間味があふれる。