立川のおかげで3大会連続メダル キラニ・ジェームズ感謝の思いを語る

オンライン取材に答えるキラニ・ジェームス

この夏、新型コロナウイルス感染拡大のまっただ中に東京オリンピックが開催された。東京・立川では7月13日から25日までの約2週間、事前キャンプを敢行し、北中南米とカリブの各国で構成されているパンアメリカンスポーツ機構(パンナムスポーツ)26カ国の4競技120人を迎え入れた。そのうち、陸上男子400メートルのキラニ・ジェームズ(29=グレナダ)は44秒19で銅メダル、同女子円盤投げヤイメ・ペレス(30=キューバ)は65・72メートルで銅メダルを獲得した。コロナ禍の祭典から約5カ月。オンライン取材に応じたジェームズは、事前キャンプの「おもてなし」に感謝の思いを強調した。

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-東京五輪での走りを振り返って

良いレースだったと思う。他の選手たちは素晴らしく、表彰台に乗るためにはいいタイムを出さなければいけないとわかっていたから、結果とパフォーマンスにうれしく思っている。

-母国の反響は

みんな祝福し、喜んでくれた。3大会連続でメダルを取る難しさも知ってくれていたと思うし、リスペクトしてくれた。もちろん優勝を望んでいた人も多いと思うが、同時にその大変さも理解してくれていたと思う。

-グレナダ初のメダルを獲得したロンドン五輪後の反応は

すごかったよ。みんなが僕のホームタウンに来てくれて、パーティーやセレブレーションが行われた。グレナダ初のメダル、しかも金メダルだったから、より特別だった。みんな興奮して、喜んでくれたよ。

-ウサイン・ボルトは

ウサインは素晴らしい選手だよ。アスリート全員のスタンダードで、同じ時代に競い合えたことを誇りに思っている。若い頃から比較されることもあったけれど、彼は唯一無二のアスリート。そして僕もそうだから、次のウサインになるように努力するよりも、自分自身であろうとした。

-カリブ諸国は彼に大きなリスペクトがある

カリブ諸国の人々はお互いにリスペクトしあっていて、大きなファミリーのようなもの。他の国の選手が良い結果を出したりしても、自分の国のように喜ぶ。そこが他の地域と違って、特別なことだと思う。

-ロンドン、リオ、東京の思い出

ロンドンにはグレナダ出身の人が多くいて、メダルを獲得した後にグレナダ人の集まりに招かれたのを覚えている。大会は本当に良かった。初出場だったから感慨深かった。リオではレースそのものが思い出に残っている。世界記録も出たし、五輪史上初めてメダリスト3人が43秒台で走った大会だったと思う。とても記憶に残っているよ。そして東京は、コロナ禍だったこともあり、いっそう特別だった。競技に出場するだけでなく、感染対策をしっかり行う必要があったからね。そして、3大会連続で決勝に出場できたことも特別だった。

-パリ五輪への思いは

まだ先のことだけど、故障などに気を付けて出場できるようにベストを尽くしたい。

-今後のグレナダの陸上界について

グレナダには才能があふれた若い選手がたくさんいる。彼らが上達するためのプログラムをいかに用意するかが大切。政府、スポーツ省、学校、選手など、みんなが連携してその道筋を作らなければいけない。この仕組みを築くことができれば、グレナダからより多くの選手が五輪に出場できると思う。

-来日前の準備は

2020年はロックダウンがあって、トレーニングが一切できなかった。ワクチン接種が進んで、少しずつ施設を使えるようになったけれど、定められた感染防止のルールの中で、必要なトレーニングを実施するのが大変だったよ。公園や路上でもトレーニングをしたりして、とてもタフな状況だった。

-立川キャンプの環境は

とても居心地が良かった。運営してくれたスタッフのみんなは本当にいい練習環境をつくるために努力をしてくれた。キャンプをエンジョイしたよ。この状況下だから街を見に行くことはできなかったけれど、トレーニング施設やホテル、食事、人々、全てが素晴らしかった。

-コロナ禍でなければ行きたかった場所

チームのスタッフからは京都をオススメされたよ。その他にも、朝の通勤ラッシュで、人が押し込まれて電車に乗るという話を聞いたから、それも見たかった(笑い)。以前、大会で東京に来たけれど、その時も観光はできなかったから、次に来る時は観光したい。

-日本のイメージは

人々がとても親切にしてくれる。それから、同じチームの友達は漫画やアニメ専門のお店に行きたいって言っていた。特にアニメやゲームのカルチャーはいつか経験したい。

-立川でトレーニング以外での時間の過ごし方は

外に行けなかったし、部屋から一切出られないとまでは言わないけれども、他のチームと交流することはあまりできなかった。食事の時間では他の人と少し会話はできたけれど、それ以外は部屋でリラックスしたり、睡眠を取ったり、PCでネットを見ていた。

-親しい選手を教えて。立川に来た女子円盤投げのヤイメ・ペレスは?

ハンスル(東京五輪陸上男子110メートル障害金メダリストのハンスル・パーチメント=ジャマイカ)は本当にナイスガイ。連絡もよく取り合っていて、食事に行ったりもする。ペレス選手については、僕がスペイン語を話せないからあまり知らないんだ(笑い)。でも素晴らしいアスリートで、立川のキャンプでの練習を見たときには、良い結果が出ると思っていたよ。

-立川で特別な思い出は

みんなとてもフレンドリーだった。特に覚えているのは、立川キャンプの最終日で、ランチの後に選手村へ行くバスに乗ったんだけど、そのときにスタッフ全員が見送りに来てくれたんだ。食堂や陸上競技場のスタッフ、ボランティアを含め、全員が手を振ってくれて、感動したよ。

-立川の人にメッセージを

立川キャンプが日本の環境に慣れるための大きな手助けになった。時差もあったから、立川キャンプのおかげで生活サイクルを整えることができた。練習できる環境を提供し、キャンプを運営してくれて本当にありがとうと伝えたい。素晴らしいおもてなしだった。感染がおさまり、また日本に訪れたときは、みんなとハグしたいよ。

◆キラニ・ジェームズ 1992年9月1日、グレナダ首都のセントジョージズ生まれ。陸上男子400メートルの選手。2007年の世界ユース選手権で14歳の年齢別世界最高(当時)46秒96で準優勝。11年、世界ランク1位で世界陸上選手権に初出場し400メートルを制し、男子短距離では大会初の10代世界王者となった。12年ロンドン五輪の開会式ではグレナダ選手団の旗手を務め、陸上男子400メートルで優勝しグレナダにオリンピック初の金メダルをもたらした。16年リオ五輪は同種目で銀メダル、21年東京五輪は銅メダル。グレナダと同じカリブ諸国、ジャマイカの英雄ウサイン・ボルトにあやかり「ボルト2世」の異名を持つ。