陸上男子で2016年リオデジャネイロオリンピック(五輪)400メートルリレー銀メダリストの飯塚翔太(31=ミズノ)が、心を整えることの大切さを説いた。
21日、母校・中央大の東京・多摩キャンパスで「心身の整え方」との題目で講演会を開催。約1時間半にわたり、実体験などを交えながら、“飯塚流”の思考法を伝授した。
自ら作成したスライドをスクリーンにうつし、5つの項目に沿って話を展開。「今日からできる心を味方に付ける習慣作り」の話題では「ささいなことでも『○○だけど良かった』とプラスに変換しよう」と発想法を説いた。試合でケガをしても、その時間で仲間を応援できたと思うことで、心が前向きになると説明。「『鳥のふんが肩に落ちちゃった。けど、地面は守った』とかね。何でもいいのでプラスにする」と力説し「すぐに『けどね…』と考えることができたら楽」と言葉を続けた。
「自分の勝負してる世界から飛び出す」のテーマでは、10年ほど前の大学時代を回顧。当時は陸上部の友人たちといつも一緒に行動していたが、ある時から各自の都合が合わなくなり、1人で授業へ行く時間が増えた。近くに座っていた学生に思い切って話しかけてみると、陸上以外の世界にも目が届くようになった。楽しさを感じた。
「僕が知らないことを知っていたりして、自分が勝負している世界から抜けた瞬間が楽しかったんですよ。大学にはいろいろな専攻の子や部活に入っている子がいる。そこで話しかけてみると、相手は意外と大丈夫ということが多い。そういうつながりが、モチベーションを高めてくれる」
身ぶり手ぶりを交えて、学生たちへメッセージを送った。
そんな飯塚も今月25日に32歳を迎える。6月上旬の日本選手権では、男子200メートル決勝で左太腿の内転筋のけいれんに見舞われた。結果は20秒84の5位。加齢には逆らえないが、明るい声で「通常通りに練習ができています。試合も出られる状態ではある」と前を向く。
今後は7月にヨーロッパを転戦。8月の世界選手権(ブダペスト)へ向けて世界ランキングのポイントを上積みし、5大会連続の代表入りを目指す。
ここ最近は10代の選手たちとレースで競ることも増えてきた。「よく『最年長』と言われる」と自覚するが「倒れるまで走りたい」と燃える思いを口にする。
「(陸上を辞めたいと思ったのは)0・1秒くらいじゃないですか。思ったとしても、辞めたいの『や』くらいしかないですね」
晴れた表情で言い切る口調に、決意がにじむ。心身を整えて、この夏も世界へと駆け出していく。【藤塚大輔】