【世界陸上】男子やり投げ崎山雄太「狙えない位置ではない」遅咲きの29歳、メダル「取りたい」

第109回日本陸上競技選手権大会 男子やり投げで優勝した崎山(2025年7月5日撮影)

<世陸連載1>

陸上の世界選手権東京大会が13日、国立競技場で開幕する。男子やり投げの崎山雄太(29=愛媛競技力本部)は、09年ベルリン大会銅メダルの村上幸史以来、同種目2人目の表彰台を目指す。7月の日本選手権では日本歴代2位&今季世界5位となる87メートル16で優勝。36年前の89年に溝口和洋が樹立した日本記録まで、44センチと迫った。初出場だった前回の23年大会で記録なしに終わった悔しさを晴らすべく、自国舞台でビッグスローを放つ。

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不滅の大記録に近づいた崎山が、2度目の大舞台に乗り込む。7月に日本人2人目の87メートル台となる87メートル16をマーク。23年世界選手権銅メダル相当の快記録を残し、36年前の溝口の日本記録に最も接近した。

「世界陸上でもメダルが狙えない位置ではない。メダルを取りたい」

遅咲きの29歳には、強い思いがある。

競技を始めた源流には、少年時代の興奮がある。やり投げの道に進もうか、迷っていた高1の12年6月。大阪の日本選手権を見に行くと、当時早大3年のディーン元気が初優勝し、村上の連覇が「12」で途切れるシーンに遭遇した。2人が競い合う姿に「とんでもない人たちだな」と心を奪われてやり投げを始めた。

日大在学中には村上に師事。5段跳びなどの跳躍練習を通じ、体全体を扱う感覚を養った。度重なる故障にも屈せず、社会人1年目の19年に初めて80メートルを突破した。

苦境で固めた決心が、飛躍につながった。23年夏には初めて世界選手権に臨んだが、開催地のハンガリー入国後に右脚すねの疲労骨折が判明。強行出場した予選は全てファウルとなり「記録なし」に終わった。

「あの時は初めて本気で辞めようと思った。もう何も言わずに消えてしまおうと」

同10月にシーズンを終えると、1カ月ほどふさぎこんだ。それでも頭に浮かんだのは「お前はパリ五輪に出るんだろう?」という声。自問自答しながらも「悩むのも自分。やると決めるのも自分。自分で決めよう」と継続を決意した。

右脚は完治せず、今も結合部は隆起している。24年にはその先端にひびも入った。今も痛むが「万全ではない分、力を抜くことを覚えた。スピードをコントロールできるようになった」と光もあった。

パリには届かなかったが、諦めなかったからこそ、今夏の快記録が生まれた。「失ったものもあれば、得たものもある。失ったからこそ分かることもあった」と思い知った。

ようやくたどり着いた2度目の舞台。「プレッシャーをどれだけ力に変えられるか。どんな戦いができるか楽しみ」。高揚感を胸に、これまでの競技人生をやりに込める。【藤塚大輔】

◆崎山雄太(さきやま・ゆうた)1996年(平8)4月5日生まれ、奈良市出身。中学ではサッカー部でGKを務め、大阪・関西創価高1年からやり投げ。19年に日大卒業後は愛媛・今治明徳高の浜本一馬コーチに師事。23年世界選手権予選敗退。25年日本選手権初優勝。趣味は漫画を読むこと。自己ベストは87メートル16。178センチ、98キロ。

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