陸上日本選手権が12~14日、名古屋市・パロマ瑞穂スタジアムで行われる。9月の愛知・名古屋アジア大会の選考を兼ねる。男子100メートルで10秒00の元日本記録保持者の伊東浩司氏(56)が、同種目のポイントを解説。若手への期待やベテラン勢の好調の要因などを語った。【取材・構成=藤塚大輔】
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今季は五輪や世界選手権がない中間年にあたるが、9月に自国でのアジア大会を控えていることもあり、好タイムを期待したい。サニブラウンや柳田らの不在は寂しさもあるが、こういう時に新しいスターが誕生することは多い。若手はチャンスだと思って臨んでほしい。
特に若手で注目しているのは、中大2年の小室。5月5日に自己ベストの10秒08をマークし、同17日のセイコー・ゴールデングランプリにも出場した。中間点以降の減速が少なく、一気に抜け出すのが特長。セイコーGGPは10秒23で予選敗退だったが、アジア勢を相手に組1着と頭1つ抜けたレース内容だった。日本選手権でも好タイムを期待したい。
一方で春先からベテランの元気さも光る。31歳の小池は10秒06、29歳の多田は10秒10と好タイムを残した。その中でも、桐生の地力の高さが際立つ。30歳となった今季は、8年ぶりの9秒台となる9秒99を出した昨季に続いて好調を維持。セイコーGGPで日本人トップの10秒15で走ると、同24日の関西実業団選手権では追い風参考記録ながら10秒0台を2本そろえた。勢いがあった20代前半の頃とは異なり、二次加速以降を大切にした落ち着いた走りをしている。さまざまな要因があるだろうが、潰瘍(かいよう)性大腸炎や右脚のアキレス腱痛などで苦労した時期を経て、自分に必要なトレーニングが明確になっていることが大きいと思う。日本選手の中では最も安定感がある。
若手がベテラン勢に割って入るには、1本目のレースが重要となる。予選で余力を残すのではなく、自己記録更新を狙ってほしい。そうすれば自分のペースで準決勝以降に臨むことができるだろう。ここ最近、桐生は予選から好記録を出している。先輩の姿をぜひ見習ってほしい。
5月下旬には27年世界選手権北京大会の参加標準記録が、日本記録と同じ9秒95と発表された。私の自己記録では届かない時代となったわけだが、これが今の世界基準だと受け止めてほしい。世界の舞台で決勝に進むには、同程度以上のタイムが必要となる。目線を9秒台ではなく、9秒9台前半へ上げていけば、日本記録も更新されるはずだ。
◆愛知・名古屋アジア大会への道 個人種目の代表枠は最大2。昨年9月の世界選手権東京大会8位入賞の最上位者は内定。日本陸連が定める派遣設定記録を上回った日本選手権優勝者も内定となる。それ以外は派遣突破者の記録最上位から選出される。リレー種目は個人種目に準じてリレーの特性を踏まえて選ぶ。