お尻をキュッと締めた“バサロ走法”で箱根の山を制する-。箱根駅伝(来年1月2、3日)に7年連続20回目の出場を果たす青学大が20日、相模原キャンパスで練習を公開。原晋監督(47)は、歴代大会で伝説の“山の神”を輩出した往路5区に、名前にふさわしいエース神野(かみの)大地(3年)の投入を宣言した。競泳五輪金メダリスト同様に“潜伏”から一気のスパートで天下の険を制圧する。

 リップサービスには定評のある原監督だが、よもやここまでとは…。重要区間の配置には、区間エントリーで“当て馬”を入れ神経を使う例もある。重要度の高い5区なら、なおさら。だが初優勝を目指す指揮官は宣言した。「山を制する者は箱根を制す。1時間17分50秒を目標に神野には、柏原君(元東洋大)のような、山の神の誕生を期待してます」。

 「3本柱」「青学クインテット」と称されるほどスピードランナーをズラリとそろえる今季の青学大。中でもNO・1とされる44キロの、きゃしゃなエースが箱根の山を登る。11月中旬のシミュレーション走で「山登りに自信があることを見せつけてやろう」と好走。5区即決後、神野は毎日、5区の過去のレース映像をビデオで目に焼き付けた。「適性はいらない。いかにきついところで我慢できるか。自信があります」。

 攻略法も準備万全。「最初の平たんな5キロで頑張っても登りでひっくり返せる。5キロはゆったり、宮ノ下あたりから行きます」。名前の「大地」は、父敏道さんが88年ソウル五輪競泳男子100メートル背泳ぎ金メダルの鈴木大地氏にあやかって命名された。あのバサロ泳法同様、前半は音なしの構えで潜伏。スイッチが入った途端にギアを一気に上げる。

 今季、青学大は体幹やストレッチのコアトレーニングを導入。神野によれば脇の下の腹腔(ふくこう)筋を鍛えるため「ケツの穴、肛門を締める。そうすると風にも飛ばされずブレない走りが出来る」という。リラックスした潜伏状態から、肛門をキュッと締め一気のスパート-。往路のフィニッシュテープを切る自分の姿しか、今の神野には見えない。【渡辺佳彦】

 ◆神野大地(かみの・だいち)1993年(平5)9月13日、愛知県津島市出身。神守中-中京大中京。箱根駅伝は前回2年生でデビューし花の2区で区間6位。11月の全日本はアンカー8区で区間3位。自己ベストは5000メートル14分4秒58、1万メートル28分41秒48。ハーフマラソン1時間2分42秒は青学大記録。原監督いわく「チームの模範生」。家族は父敏道さん、母恭子さん、兄翼さん。164センチ、44キロ。