テストマッチは勝つことが重要だし、勝てたことが大きい。スタンドを埋めたファンの中には、中高生ら若い世代も多かった。9日に行われた日本対イタリアのテストマッチを見て「僕もラグビーをやりたい」「日本代表になりたい」という子どももいたはず。選手たちは勝利で日本代表の「責務」を果たした。勝ってくれて、本当に良かったと思う。

日本対イタリア 前半、激しくタックルにいくフッカー堀江(右)(撮影・狩俣裕三)
日本対イタリア 前半、激しくタックルにいくフッカー堀江(右)(撮影・狩俣裕三)

 昨晩、日本代表のミーティングに呼ばれて、15分ほど話をした。ラグビーではよく使う「ノブレス・オブリージュ」(責任ある立場の者には負うべき責務がある)をあげ、勝つことの大切さ、多くの人に見られることの意味、代表としての心構えなどを伝えた。

 話す前に、リーチ主将から「若い選手は代表をサンウルブスの延長だと思っている」と言われた。サンウルブスと代表は違うし、スーパーリーグとテストマッチは違う。それを意識したことが、この日の勝利につながったとしたら、少しはお役に立てたかと思う。

 一番重要な勝利は手にした。ただ、手放しで喜べない点もある。勝つには勝ったが、相手のミスにも助けられた。もっと主体的にゲームを支配して、勝ってほしい。キックはトライにつながる意図したものもあったが、中には何となく蹴った意志のこもらないものもあった。ここは、次戦に向けて修正してほしい。

 この日、前半29回あった攻撃機会でパスを使ったのは7回。そのうち5フェーズ(5次攻撃)まで重ねたのは3回だけだった。後半も28回の攻撃機会でパスが13回、5フェーズは2回だった。日本の持ち味は、我慢強くフェーズを重ねて攻め続けてのトライ。意図のないキックよりも、もっとフェーズを重ねたトライも見たいと思う。

ラグビー日本代表について語る今泉清氏(撮影・峯岸佑樹)
ラグビー日本代表について語る今泉清氏(撮影・峯岸佑樹)

 ただ、本当に勝ったことは大きい。大分は来年のW杯開催地。地元出身者(大分舞鶴高出)として、ラグビーで盛り上がることはうれしい限りだ。確実にラグビーファンは増えるはず。W杯も見たいと思う市民も多くなる。W杯を盛り上げるためにも、イタリア戦の勝利は大きかった。(ニッカンスポーツ・コム/コラム「今泉清のひとり言」)