有明コロシアムおよび有明テニスの森公園は、20年東京五輪パラリンピックに向け、11月末から全面改修に入る。工期完了は、19年7月末の予定だ。そして、現在の同会場が最後の舞台となった楽天ジャパンオープンテニスが、今年も10月に盛大に行われた。

 実は、今年の大会は、観客動員が懸念されていた。同大会最大のスター、錦織圭(27=日清食品)が8月の右手首のケガで、早々と欠場を表明していたからだ。しかし、ふたを開けてみれば、7日間で大台の8万人を突破。8万266人の総観客数は歴代3番目の多さとなった。

 ビッグ4と呼ばれるナダル(スペイン)、フェデラー(スイス)、ジョコビッチ(セルビア)、マリー(英国)は、12年のマリーを最後に、誰も出場していない。同じ500というレベルだが、賞金総額が倍以上で、同じ週に行われる中国オープンに出場するからだ。加えて、錦織が欠場となれば、観客の大幅減少が危ぶまれても仕方がなかった。しかし、すべては取り越し苦労に終わった。

 現在の日本テニス協会名誉会長である盛田正明氏(90)が、会長に就任したのが00年だ。盛田氏が最も尽力を費やしたことの1つが、ジャパンオープンの活性化だった。会長就任の前年99年には、総観客数は2万5706人と過去最低を記録していた。

 すべての4大大会を毎年のように訪れていた盛田氏は、4大大会の会場をヒントに、ジャパンオープンの“お祭り化”を企画。テニスを見に来るだけでなく、ちょっとしたテーマパークのように、親子連れが楽しんで来られる会場を目指した。

 それは、選手の名前で観客を呼ぶのではなく、大会自体の楽しさで、観客を増やそうという試みだった。それは、11年に会長職を引き継いだ畔柳信雄氏(75)にも受け継がれた。現在、多くの飲食やスポンサーのブースが並び、大型スクリーンが設置され、サーブスピードコンテストなど参加型アトラクションもあり、生観戦以外でも十分に楽しめる。

 今年、ビッグ4も錦織も出場しなかった楽天ジャパンオープンが、8万人以上の観客を動員したことは、盛田氏らが続けてきた選手に頼らない大会が、まさに完成された時だった。そして、同大会は、来年1年だけ、武蔵野の森総合スポーツプラザに会場を移し、19年には新装成った有明に戻ってくる。【吉松忠弘】


 ◆吉松忠弘(よしまつ・ただひろ) スキージャーナル社を経て87年に日刊スポーツ新聞社に。五輪競技として、テニス、体操、卓球、フィギュアスケートなどを担当。現在は錦織圭番として、老骨にむち打ち駆け回る日々。