男子200メートル平泳ぎで4位の金子(撮影・江口和貴)
男子200メートル平泳ぎで4位の金子(撮影・江口和貴)
男子200メートル平泳ぎで4位の金子(撮影・江口和貴)
男子200メートル平泳ぎで4位の金子(撮影・江口和貴)

2度目の心臓手術をへて、新シーズンを歩み出した。競泳金子雅紀(26=イトマン東進)が、短水路(25メートルプール)で争うW杯(ワールドカップ)東京大会を迎えた。初日の9日は200メートル背泳ぎ。予選を1分52秒79で通過した。「短水路の試合は1年ぶりで。ペースもわからずに泳いでそのまま終わっちゃった」。言葉とは裏腹に決勝進出を決めて表情は明るい。

その理由がある。9月下旬に都内の病院で心臓のカテーテル手術を受けた。17年1月から不整脈に悩まされており、今年5月に続いて2度目の手術だった。4日間で退院し、すぐ泳ぎ始めた。「(脈が)乱れることはあるけど、頻度はそれほどでもない。乱れても以前ほどじゃなくなった」。

以前は「試合形式の練習になると、動悸(どうき)がして、深呼吸ができない。全身に酸素が足りなくなって、練習を切り上げたり、休んだりしていた」。今夏、日本代表に選ばれたが、国際大会の辞退も頭をかすめたが、「やっぱり日本代表で出たい気持ちがあった」という。26歳が日の丸を背負う姿は悲愴(ひそう)感が漂ったが、2度目の手術で体の状態は好転したといえる。以前に比べて、強化練習も行えるようになった。今後は心肺機能を鍛える高地合宿も予定しており、医者からは「命の危険はない」と言われている。

今年2月に骨折した左手首はボルト1本が入ったまま。「手首のほうは再手術せずにじっくりと感覚に慣れていくようにします。陸上トレーニングの制限はあるけど、水中トレーニングに制限はないので」。

16年リオデジャネイロオリンピック(五輪)代表。200メートル背泳ぎの短水路日本記録は金子が16年に出した1分48秒25。この日の決勝は、表彰台まであと0秒41の1分51秒18で4位だった。「1分50秒を切って、表彰台に上がりたかったですね」と言った。

当時と変わってしまったものは多いだろう。心臓、左手首、泳ぎの感覚…。ただ変わっていないものもある。「新シーズンの目標は来年4月の日本選手権で(100メートルと200メートルの)2種目で代表になること。しっかりと練習は積めている。もう少し」。一途に日本代表を目指す、その情熱の行方を見届けていきたい。【益田一弘】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)

◆益田一弘(ますだ・かずひろ)広島市出身、00年入社の42歳。五輪は14年ソチ大会、16年リオデジャネイロ大会、18年平昌大会を取材。16年11月から水泳担当。