幕内を沸かせた人気業師が、約3年ぶりに関取として迎える場所で闘病中の女性の思いを背負う。大相撲11月場所(11月8日初日、東京・両国国技館)で18年初場所以来の関取復帰を果たした東十両13枚目宇良(28=木瀬)が28日、新たな化粧まわしを贈られることを明かした。贈り主は福岡・行橋市の女性で「アミロイドーシス」を患う酒井佐津恵さん(88)。化粧まわしのデザインは宇良の希望で、自身の取り口を表す「技」の字が大好きなピンク色で書かれている。化粧まわしの製作費約150万円は、酒井さんが貯金を切り崩して全額負担した。

交流のきっかけは1通の手紙だった。幕下で右膝の負傷から復活を目指していた18年春ごろ、送られてきた手紙の「宇良関の相撲を見て元気をもらってます」という言葉に胸を打たれた。感謝の気持ちとしてサイン入りの手形を贈ると、対面を熱望する酒井さんの関係者の尽力もあり、同年九州場所後に“初顔合わせ”が実現。感動する酒井さんは、関取復帰をかなえれば化粧まわしを贈ることを約束していた。

入退院を繰り返し、年々体調が悪化しているという酒井さんのためにも、宇良は「元気に土俵に上がる姿を見ていただきたい」と意気込む。今年の11月場所はコロナ禍のため、本来の九州開催ではなく東京開催。対面や化粧まわし制作に尽力した関係者によると「(酒井さんは)相当残念がっていたが『来年の九州場所まで私は頑張って生きる。生きる活力にします』と言っていましたよ」と明かす。これまではネット中継や報道を中心に活躍を届けていた宇良だが、来場所からテレビ中継がメイン。「僕の相撲で元気づけられる人がいるのは頑張る糧にもなる」と、モチベーションは十分だ。【佐藤礼征】(日刊スポーツ・コム/スポーツコラム「WeLoveSports」)

福岡県行橋市在住の女性、酒井佐津恵さんから宇良に贈られる化粧まわしのデザイン
福岡県行橋市在住の女性、酒井佐津恵さんから宇良に贈られる化粧まわしのデザイン