青年海外協力隊員としてバレーボール女子ケニア代表の指導に携わる片桐翔太さん(33)が、約10カ月ぶりに赴任地での活動を再開した。所管する国際協力機構(JICA)の許可が下り、1月27日に戻った。

ケニアはアフリカ予選を勝ち抜き、3大会ぶりにオリンピック(五輪)切符を獲得した。開幕まで半年を切った東京五輪では、1次予選初戦で女子日本代表と戦う。片桐さんは緻密な筋力トレーニングやデータ分析をさらに浸透させ、大会に向けて選手強化をサポートする考えだ。

10カ月ぶりに選手たちと再会を果たした喜びを尋ねると、異国の地で奮闘する協力隊員の表情が一気に崩れた。オンライン取材に応じた片桐さんは「選手や監督と会ったときに『おかえり』と明るく出迎えてくれて、照れくさかったですよ」と笑みをこぼした。

山形南高時代に全国大会出場経験があるが、「トップ選手と比べて身体能力や技術で劣っていた」とプロの道は考えなかった。競技への恩返しがしたいと指導者を志し、さまざまな国で経験を積んだ。母国で行われる2度目の夏季五輪に関わることを模索していたところ、ケニア女子代表指導に関わる協力隊員派遣募集を発見。熱意は実り、19年4月から派遣された。

英語を駆使してフィジカル強化やデータ分析の重要性を選手たちに伝えた。本大会の切符を勝ち取り手応えを感じていた直後、新型コロナウイルスの影響で無念の一時帰国を余儀なくされた。

落ち込んでいる暇はないと、その歩みを止めることはなかった。ケニアバレー界発展のために何ができるか。心に秘めた使命感が背中を動かし続けた。故郷・山形に戻り県内の小中高バレーチームで指導やスポンサー活動に奔走。11企業が賛同し、派遣先にボールを送るなどの費用を援助すると申し出てくれた。「僕自身がレベルアップを遂げて戻りたい。その期間になったということを考えると、決して無駄ではありませんでした」と振り返る。

派遣期間は3月末で終了する。任期が延長できるどうかまだ分からないが、今後もケニア代表に関わっていきたいと意欲を見せる。東京五輪に向けて「個人競技の印象が強いですけど、チームスポーツでも強いケニアを見せたい」と静かに闘志を燃やしている。

【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)