盛岡農(岩手)自転車競技部の仲良し“ニコイチ”若子内(わかこない)凜と伊藤夢希(ゆうき、ともに3年)は、お互いの存在を「空気」と声をそろえた。若子内が「いないと窒息しちゃう。なくてはならない分かり合える存在」と言えば、伊藤も「2人でやってきたから今がある。成績も、いつも同じくらいだったから高め合えた」。顔を見合わせて笑顔があふれた。

昨夏の全国総体ではロードで若子内が7位、伊藤が9位。前日のトラックで落車して大けがを負った若子内だったが、約53キロの道中も励まし合い、初の全国上位に入った。今年の目標は2人でメダル獲得だったが、全国選抜、全国総体と中止。伊藤は「心が空っぽになった」。若子内も「全国に行って、ご当地のおいしいものを食べるのも楽しみだったのに…」。集大成は競技も思い出も消えた。

27、28日には県総体などの代替大会(岩手県紫波自転車競技場)が行われる。高校で競技生活を終える2人にとっては最後の舞台。伊藤は卒業後、青年海外協力隊(JICA)の活動を希望し「人種差別も無くしたいし、いつかは発展途上国で働きたい」。若子内は整体師を目指し「体だけでなくアスリートの心も支えたい。夢希の腰痛も治します」と誓った。ラストランは結果以上に「2人での時間を楽しく」が合言葉。一緒に海外旅行に行くことも次の夢だ。【鎌田直秀】

○…男子の畑中律輝(3年)と斎藤光星(2年)も、出場権を得ていた全国選抜中止の悔しさをバネにする。上り坂が得意な畑中は「ヒルクライム」と呼ばれる山登りロードレースの代替大会も信じ「優勝を狙います」。動物科学科での勉強を生かして「牛が好き」と、卒業後は酪農家を目指す。ジュニアオリンピック出場経験がある斎藤も「先輩と走ることが楽しかったので残念。自分はトラックが得意なので全国で活躍したい」と夢を引き継いだ。