愛用するボールを手にポーズをとるアン・シネ(2018年10月15日撮影)
愛用するボールを手にポーズをとるアン・シネ(2018年10月15日撮影)

「日本語をしゃべる時、私の前では気をつけた方がいいですよ」-。

久しぶりに日本で取材を受けたアン・シネ(27=韓国)は笑いながらそう言って、記者をにらむようなしぐさを見せた。NOBUTAグループ・マスターズGCレディース(18日開幕、兵庫・マスターズGC)に出場するため来日した15日、大阪市内で開かれたイベントに登場した際のことだった。日本語はまだ片言だが、聞き取りはほとんど理解している。だから、「私の前で悪口を言えば、すぐにわかるわよ」ということを伝えたかったようだ。

日本でプレーするのは7月のセンチュリー21レディース以来、3カ月ぶりになる。今季は推薦で5試合に出場し予選落ちが3度。中京テレビ・ブリヂストンレディースの39位が最高成績で、獲得賞金は同ランク139位の66万円しかない。現時点でNOBUTAグループ以降のツアー出場は白紙で、日本で見られるのは年内最後になる可能性もある。注目はされても、結果が伴わない現実。それを痛いほど分かっているからこそ、冒頭のような言葉が出てきたのだった。

「私が毎日着るウエアには、必ず意味があるんです。今日は契約するボールのイベントなので、ボールのような真っ白にしました。今週、どんな色のウエアを着るかは、楽しみにしていてくださいね」

強く、美しい-。常にファッションを重要視するアン・シネには、そんな理想像がある。成績が出ていない今は、批判の声もあるだろう。だからこそ「(年内の日本ツアーは)今週で最後になるかも知れないから、少しでも上に行きたい。結果につながればいいですね」と心から言った。以前、このコラムに書いたが、予選落ちすればロッカー室の片隅に隠れ、1人、しくしくと泣いていたこともある。

ただ、美を追究するだけではない。勝ちたい、強くなりたい。その思いは、日本で不振にあえいでも、薄れることはない。

どんな時でも、嫌な顔をすることなく丁寧に取材に応じる。そんな姿は、プロのお手本のようでもある。かつてのイ・ボミがそうだったように。日本ツアーで輝きを放つ日を、楽しみにしている。【益子浩一】

髪をかき上げるアン・シネ(2018年10月15日撮影)
髪をかき上げるアン・シネ(2018年10月15日撮影)