片山晋呉(47=イーグルポイントGC)の公式YouTubeチャンネルが好評だ。初心者から上級者まで、レベルを問わず、全てのゴルファーに向けた基礎からのレッスン動画がメイン。1本10分前後の動画が、1週間に数本のペースで更新されている。多いものは、100万回を超える再生回数を記録。約半年前から始め、チャンネル登録者数は15万人に達する勢いだ。現在では、冗談交じりに「ユーチューバー兼プロゴルファー」と自称する。

新型コロナウイルス感染拡大により、国内男子ツアーの試合数と、ファンとの交流の場が激減したことが、新たな試みを始めるきっかけになったという。「自分で台本を作って、自分の思い通りにできて楽しい」と、数多くのコメントや質問が寄せられることに、やりがいを感じている。

試合数の減少によって着手したのは、YouTubeだけではない。肉体改造にも取り組み始めていた。1月ごろから「体幹と下半身が中心。おしりが大きくなってきた」と、筋力トレーニングを強化。年明け早々は71キロだった体重が「今は76キロ。人生初」という増量に成功した。週2回は、特にハードなトレーニングを行うといい「ジムから帰る時に、マネジャーが運転してくれる車までたどり着けない、きつい。めちゃくちゃ大変」と、筋肉痛の極致で、その日は日常生活にも支障を来すほどだという。

来年1月には48歳を迎える。ほとんどのアスリート、特にプロスポーツなら引退している年齢だ。だがゴルフは、一生「プロゴルファー」。シニアツアーなどは、50歳がルーキーイヤーという特殊な世界で、日本ゴルフツアー機構(JGTO)会長の青木功だって、78歳の今も肩書はプロゴルファーのままだ。

YouTubeで配信を始めるにあたり、片山は「僕なんかは171センチの72~73キロ(当時)で、ごくごく平均的な日本人の体形だと思います」と、動画の中で語っている。それでも賞金王に5度輝き、メジャーでも優勝争いに加わった経験から、努力次第で周囲の想像を上回る成果を残せると、誰よりも体感してきた。

試合がないことを逆にチャンスにとらえ、47歳にしてなお、新たなことに挑戦するのは、アスリートに限らず、なかなかできることではない。YouTubeで定期的に配信を続けるからこそ、緩んだ肉体を見せないよう自分を追い込み、視聴者に説得力を持たせるため、成績も追い求める。そんな好循環は、ベテラン選手にとって今後の、1つの良いモデルケースになると感じた。【高田文太】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)