石川遼(23=CASIO)が小数点以下の争いを制し、来季の米ツアーシード権を獲得した。レギュラーシーズン最終戦の最終日は66で回り、通算9アンダー、271で31位タイ。125位以内にシード権が与えられるフェデックスポイントランキング(FR)で当落線上に3人が並んだが、小数点以下の比較で124位に滑り込み、2年連続でシード権を確保した。

 石川が土壇場で生き残った。すでに賞金ランク125位以内の“準シード”は確実だったとはいえ、あくまでFRでのシード獲得を見据えてきた。この日は残り6ホールで3バーディー。15番パー5ではティーショットを左のラフに曲げながら、第2打でグリーンを捉えてバーディーを奪った。「自分をしっかりコントロールして、いいゴルフができた」とうなずいた。

 ただ、納得のいくプレーと裏腹に目標の通算10アンダーには届いていなかった。この時点でFRは127位。ホールアウト直後には思わず「ダメかな」と漏らした。テレビインタビューでも「(10アンダーに)届かなかった時点でさよならって感じですね」と悔しさをにじませた。コースから引き揚げたホテルでもテレビで後続のプレーを確認することはなかったという。

 しかし、終盤に状況が動いた。最終組の6組前のワトニー(米国)が18番でボギー。石川と同じ通算9アンダーとなって上位グループの人数が減り、配分が0・5ポイントアップ。最終組から3組前のパーシー(オーストラリア)も18番でボギー。通算8アンダーグループに転落し、さらに0・5ポイントを上積みした。この合計1ポイントでマッケンジー、オバートン(ともに米国)をかわして、シード圏内に食い込んだ。石川は公式サイトで「まさに滑り込みセーフってやつです」と表現する逆転劇だった。

 強い思いが流れを引き寄せたのかもしれない。シード権確保のため8週連続出場の強行日程もいとわなかった。7月のカナディアンオープンでは開幕前日のプロアマ戦を欠場し、ぶっつけ本番で臨むことも。疲労を考慮して前日の練習ラウンドを見送っていたが、体が悲鳴を上げた。佐藤キャディーも頭痛や足底筋膜炎に悩まされるなど、チームとして極限の状態で戦ってきた。だが、石川はたくましかった。最終戦を前にしても「今までやってきたことを貫く。(シードのかかる)最終戦だからと攻めるスタイルは変えない」。ぶれずに目標を達成した。

 息つく暇なく、出場権を獲得した27日からのプレーオフ第1戦、バークレイズ(ニュージャージー州)に挑む。全4試合。1試合ごとにポイント上位125人→100人→70人→30人とシビアなふるい落としが待っている。それでも、失うものはない。再び、ひたすら上を目指すだけだ。

 ◆米ツアーシード 120~156と試合によって変わる出場選手枠を最初に埋めていくのが近年のメジャー優勝者やシード選手。レギュラーシーズン終了時点で、フェデックスポイントランク(FR)または賞金ランクの125位以内ならシードを獲得できる。ただ、賞金ランクは“準シード”に近く、125位以内に入ってもプレーオフには出られない。世界ランクなど個別の出場条件があるメジャーや世界選手権シリーズ以外にも、前シーズンのFRを出場資格とする試合があり、賞金ランクによるシードで出場できる試合数は限定される。

 シードを失った場合は下部ツアーとの入れ替え戦に回ることになる。また、FRでシードを獲得することで、開幕前日の水曜日に行われるプロアマ戦に出やすくなる。プロアマ戦に出られなければ火曜日の練習ラウンドが必須となり、日程的な制約が生まれる。

 ◆フェデックスポイント レギュラーシーズンの大会と順位ごとに振り分けられる得点。原則的に優勝者は通常大会で500ポイント(メジャーは600ポイント)を獲得できる。2位で300ポイント…70位で1ポイント、71位で0・98ポイントというように1位から85位まで配分されるポイントが決められている(予選落ちは0点)。今回の石川のように31位タイに7人が並んだ場合は31~37位までに振り分けられているポイントを足し、人数で割ったポイントが得られる。石川が1打スコアを落としていれば37位タイとなり、獲得できるポイントは31・5ポイントでFR125位には届いていなかった計算になる。