【ロサンゼルス(米カリフォルニア州)24日=千歳香奈子通信員】米男子ゴルフで歴代最多82勝を挙げているスーパースター、タイガー・ウッズ(45=米国)が選手生命が危ぶまれる交通事故に遭った。

23日(日本時間24日)午前、米ロサンゼルス郊外で自動車の単独事故を起こし、救急搬送された。同選手の財団は複雑骨折した右すねや足首の緊急手術を受けたことを発表。命に別条はないが、45歳という年齢から第一線への復帰は難しいとみられる。

   ◇   ◇   ◇

ウッズは23日午前7時15分(日本時間24日午前0時15分)頃、ロサンゼルス郊外の高級住宅街ランチョ・パロスベルデスを走行中、緩やかな下り坂のカーブでコントロールを失い、中央分離帯を乗り越えた。反対側の道路を突き抜け、その先の斜面の樹木にぶつかりながら約6メートル転げ落ちた。

乗っていた高級のスポーツタイプ多目的車(SUV)は前面が完全に破損。先に駆けつけた郡警察が斧(おの)などを使い救出した。フロリダ州ジュピターに住むウッズは、前週にカリフォルニア州リビエラCCで開催された韓国の現代自動車が後援するジェネシス招待にホストとして行事に参加。その際に貸し出された車で移動していた。救助にあたったロサンゼルスの郡消防局によると、脚から骨が飛び出す重傷状態でハーバーUCLA医療センターに緊急搬送された。

事故の数時間後に行われた記者会見で、捜査員は「名前を尋ねると『タイガーだ』と答えたので、誰だか分かった。冷静で落ち着いているように見えた。シートベルトは装着していた」「出血が多かった。足首や両脚複数の負傷、とりわけ片方の脚の損傷が激しかった。命を落とさなかったのは奇跡だ」と証言。道路にブレーキ痕はなく、高速で走行していたもよう。飲酒などは確認されなかった。

現地メディアによると、事故の前日にテレビ撮影があり、会場のホテルに宿泊していた。翌朝、慌てた様子でホテルから車で飛び出すウッズと、テレビスタッフが遭遇。ぶつかりそうになり、体が震えるくらいに驚いたという。どこに向かっていたかは不明だ。

昨年12月に腰の手術を受けたウッズは、リハビリ中だった。過去に5度優勝し、19年に43歳で復活優勝を遂げたマスターズ(4月8日開幕)出場を目指していた。21日には出演したテレビでリハビリの状況などを語っていた。しかし、今回の事故でマスターズ出場は絶望的となった。

同財団はツイッターで「このつらい時に、みなさんの多大なるサポートとメッセージに感謝します」というコメントとともに「右脚下部及び足首の手術を受けました」と説明。複雑骨折と伝えられる右脚脛骨(けいこつ)と腓骨(ひこつ)にはプレートが入り、足首はボルトとピンで固定されている状態だという。手術を受けたウッズは意識があり、会話はできるようだ。

ウッズは09年にも運転する車で消火栓と木に激突。それを機に不倫騒動が発覚し、ゴルフ活動も一時中断。それ以外にも、故障などさまざまな困難を乗り越え、19年のマスターズで復活優勝。同年、日本で開催されたZOZOチャンピオンシップで歴代最多82勝に並んだ。今回も手術から復帰へ向けての過程で深刻な事故に遭ってしまった。

複雑骨折からの回復は容易ではない。45歳という年齢を考えると、1年以上に及ぶリハビリを経て、再び第一線で活躍することは厳しいと言わざるをえない。

 

◆タイガー・ウッズ。1975年12月30日、米カリフォルニア州生まれ。故人の父アールさんの指導で、生後9カ月でゴルフを始める。スタンフォード大を中退し、96年8月プロ転向。97年マスターズで21歳3カ月の史上最年少優勝を果たし、メジャー初戴冠。同年に最年少で賞金王に輝く。00年に史上5人目の4大大会制覇を果たすと、現在までにトリプル・グランドスラム達成。メジャー通算15勝は、ジャック・ニクラウスの18勝に次ぐ史上2位。19年10月に初開催された日本でのZOZOチャンピオンシップで、サム・スニードに並ぶ米ツアー最多の通算82勝目を挙げた。その後は未勝利。今月21日付の最新世界ランキングは50位。183センチ、84キロ。

ウッズの症状 医師の見解はこちら―>