宮里藍、電撃復帰「100%ないと今は」/会見全文

引退会見に臨む女子ゴルファーの宮里藍(撮影・小沢裕)

 26日に現役引退を発表した女子プロゴルファー宮里藍(31=サントリー)が29日、都内のホテルで記者会見に臨んだ。報道陣、関係者ら300人を前に登壇し「昨年の夏ごろに今年(17年)いっぱいで現役の選手を引退するという決意を決めました」と冒頭であいさつした。主な質疑応答は以下の通り。

-引退の理由は

 宮里 モチベーション維持が難しくなったことが一番の決め手。そう感じたのが4、5年前。今までやれていた練習ができなかったり、自分を追い込むことができなくなってしまったので。そこは自分が望んでいる形ではなかった。プロである以上、結果は残したいですし。自分が求めている、理想としている姿はそこにはもうなかったので、こういう形になりました。

-まだメジャー制覇は成し遂げていない

 宮里 メジャーに出場できるチャンスは残っているので、そこはあきらめていないです。今年いっぱいという期間を設けたことで自分が頑張れているというのが現状なので。最後勝って終わりたいというモチベーションが上がっている。年内のチャンスは1つでも多く勝ちたいと思っています。

-休養してからの復帰は選択肢にない

 宮里 今のところそれはないですね。やはり第一線でずっと結果を残していくにはエネルギーが必要なので、それは私自身とても感じていることです。1度限界を感じてしまった上での結論なので。

-数十年後の電撃復帰は

 宮里 100%ないと今は思っています。今回、いろいろと考えて、自分にもっと何かやれる可能性があると考えているので。プロゴルファーとしては変わらないですし。4歳からゴルフをはじめて、20年以上、ゴルフを通じてお世話になったので、また違った形で恩返しできればいいと思っています。

-今振り返って

 宮里 これ以上ないゴルフ人生だと思っています。

-今季の日本ツアーは

 宮里 できるだけ、自分がプレーできるチャンスあれば。来週のサントリーレディースが一区切りで。また米ツアーで戦って、流れでと考えています。

-引退後は

 宮里 具体的には決まっていないのが現状です。年内は今あるエネルギーをすべて今季の残り試合に注いで、ゆっくりしてあらためて自分に何ができるかを考えていきたいと思います。

-近々、結婚は

 宮里 それは今のところはないですね。すみません(笑い)。

-子供できたらゴルフを勧める

 宮里 こういう環境なのでまったくゴルフをさせないということにはならないと思うのですけど。一緒に遊ぶようにやれればやってみたい。

-隆盛期にある日本女子ツアーを支える次の世代に伝えることは

 宮里 技術的にもフィジカルでも恵まれている選手がいっぱいいて、すごく楽しみ。今の日本女子ゴルフ界はいいところにあるが、それが永遠に続くわけではない。若い選手はプロ意識を持って支えてくれる方たちに感謝の気持ちを持って、今のままブレずにやっていってほしい。

-宮里選手はメディアにも常に誠実に対応してきてくれた

 宮里 父から「プロゴルファーである前に普通の人でありなさい」と言われて育った。それがちゃんと形になっているのであれば、父のおかげかな。

-あなたにとってゴルフとは

 宮里 人生にとって大切なもの。プロになって14年、内容の濃い時間を過ごせた。ゴルフを通じてたくさんの方と知り合えて、つながって、人生がより豊かになった。ゴルフには感謝の気持ちでいっぱい。

-一番思い出の残る試合、ショットは

 宮里 やはりアマチュアで優勝したミヤギテレビ杯。本当にターニングポイントになった。あの試合がなければ、今の自分はない。米ツアーでは初優勝したエビアンマスターズ。4年かかってもぎ取ったので、達成感もあった。その前にドライバーのスランプがあったので、プレーオフの18番ホールのティーショットは、それを乗り越えた一瞬だったのでよく覚えている。

-世界でも活躍できた一番の要因は

 宮里 自分自身と向き合えたことと思う。小柄な方でパワーもない。ショットの精度と小技で勝負するタイプだし、そこにメンタルトレーニングも加わった。ゴルフのいいところは、体格差がそのままハンディにならない点。自分をしっかりコントロールして、自分のゴルフを信じてやれた。

-引退決断で誰かの影響は

 宮里 誰にも話さず、自分で決めたこと。引退を発表してから、ロレーナ(オチョア)にメールをもらったりした。今後、彼女にアドバイスを求めることが増えると思う。

-東京五輪について

 宮里 今はちょっと考えられない。何か私にできることがあれば、積極的にやらせていただきたい。

-拠点は米国? 日本?

 宮里 全然決めていない。今回の決断にあたって、それを先に決めると自分を苦しめると思ったので、あえて、決めなかった。今季頑張って、その先にある思いを大切にしたい。

-あらためて周囲の反応は

 宮里 米国の選手も連絡をくれた。いろいろ考えた末(発表は)このタイミングになった。シーズン始めでもよかったけど、今年いっぱいと決めたし、自然体で力を出し切るためには、という思いが強かった。でも、日本で出る試合も数少ない。みなさんに思いを伝えて、1試合でも多くの試合でたくさんの人が見に来てくれればステキなことだとも思った。それで、このタイミングになった。

-中京テレビ・ブリヂストンでも好結果を残した。まだまだやれるのでは

 宮里 戦い続けるという意味では、今の自分には足りない。それを痛感している。プロとして結果を残し続けることが難しくなってしまった。今のモチベーションは期間限定。今年いっぱいと決めたことで、今のプレーができている。

-なぜ、4、5年前からモチベーションが上がりにくくなったのか

 宮里 2012年の後半ですが…。その年は米ツアーで2勝して、09年から4年連続で優勝していた。世界ランク1位にもなって、プロゴルファーとしてピークを迎えている感覚があった。それなのにメジャータイトルが取れない葛藤があった。「一番調子が良くて、自信がある時にメジャーに勝てないなら、どうすればいいのか」と考えてしまって、立ち止まってしまった。どこにモチベーションを置いて立ち直せばいいのか。自分を見失ってしまった。そこが難しかった。

-4、5年前、具体的にどのタイミングで

 宮里 2012年の全メジャーを終えた時。メンタルコーチにその次のカナダの試合で「何を目標にすればいいか、分からない」と相談したら「焦らなくていいんじゃないか? どの選手にも起こり得ることだ」と。そこで自分でどうやっていくかを探していたら、パットもイップスみたいになってしまった。

 でも、そこが逆に頑張れたきっかけだった。パターが得意だったので「どうしても乗り越えたい」と思えた。最終的に、その思いが今後の優勝につながってくれれば、と思う。

-昨年はメジャーで優勝争いした。「勝つ日も遠くない」と言っていた。今はどう思っている

 宮里 今の方が、より手応えを感じている。取り組んでいることが、ようやく形になりつつある。ゴルフは調子が良ければ、結果が残るものではないが、思い描いていたものに近づきつつある。ただ、前回優勝してから5年たっている。勝っていた時のイメージも薄まって、勝ち方も忘れてしまっている。その辺が、今季の新たなチャレンジかなと思う。

-中学時代から大事にしている座右の銘は

 宮里 「意思あるところに道はある」。これからも大事になる。

-同学年の横峯さくらの反応は

 宮里 昨年10月ぐらいに話した。そんなに驚いてなかった。(報道の)皆さんがよく知っている、彼女のリアクション。それが私はうれしかった。「タイミングは今だったんだね」と。

-ロレーナ・オチョアが28歳で引退した後、兄優作と身の引き方について話したと聞いたが

 宮里 ロレーナの引退には、衝撃を受けた。彼女こそ突然だった。本当に引き際までかっこ良かった。当時世界NO・1で、彼女こそまだまだ戦えた。ただ、自分の気持ちに忠実、潔く、シンプルだった。アニカ(ソレンスタム)の引退もそうだったけど「引き際にはいろんな形があるんだ」と思った。

 ただ、反対に今回の決断には影響がなかった。私の人生の問題は私が決めるしかなかったので。

-昨年夏、最終決断の際のきっかけは

 宮里 ちょうどリオ五輪で、3週間ほど米ツアーが休みになった。8月ぐらいに3週間のオフはプロになって初めてで、すごく大きかった。自分の気持ちをゆっくり考えられた。それまでももやもやはあったけど、試合があったし、じっくり考えるのが難しかった。だから、しっかり整理をつけられた。

-若い選手が米ツアーでやっていくために、必要なことは

 宮里 選手によって違うが、私は自分のプレースタイルの追求にエネルギーを注いだ。他人と比べないこと。どこでやっても、自分がしっかりしていれば、戦える。私は自分と向かい合うのが、趣味というか好き。自分から逃げないところがあった。

-母の手料理で好きなものは

 宮里 米国に来た時、よくサータアンダギーを作ってくれる。他の選手にもすごく好評で。「次、いつもらえる」と言われるぐらい。

-両親の言葉で特に印象に残っているのは

 宮里 私の両親は「見守る」という言葉がぴったり。私がやることを淡々と遠くから見ていてくれた。それがありがたかった。見守ってくれることは、間違った方向に行っていないということ。その距離感はすごく難しいのに。

(最後のあいさつ)

 宮里 本日は本当にお忙しい中、この場にお集まりいただき、ありがとうございました。約15年間、プロの選手としてプレーしてきて、本当に…(絶句、涙ぐむ)…すみません。本当にたくさんの方にサポートしてもらえたのがうれしかったですし、選手としても幸せだったと思います。

 自分の引き際に寂しさは一切なく、感謝の気持ちを持ってプレーできることをありがたく思っています。支えてくださったスポンサーの皆様、家族、友人、そしてファンの皆様、ここにいる皆様も含めて、本当に感謝しています。残りシーズンも頑張りますので、もう少しよろしくお願いします。