マツヤマは現代のベン・ホーガン、練習の虫も届かず

最終ラウンド1番 トリプルボギーのスタートとなり、厳しい表情の松山(撮影・狩俣裕三)

<米男子ゴルフ:全英オープン>◇最終日◇23日◇英国・ロイヤルバークデールGC(7156ヤード、パー70)◇賞金総額1025万ドル(約11億7875万円)◇優勝賞金184万5000ドル(約2億1217万5000円)

 【サウスポート(英国)=亀山泰宏】世界ランク2位の松山英樹(25=LEXUS)は3バーディー、2ボギー、1トリプルボギーの72で回り、通算2アンダーでホールアウトした。通算4アンダーで首位と7打差の5位で出ると、1番で第1打を曲げてトリプルボギーをたたいて大きく後退。勝負の後半も11、12番で連続ボギーをたたき、優勝争いから遠ざかった。ホールアウト時点で14位だった。

 松山に笑顔は少なかった。首位と7打差の最終日。いきなりトラブルに見舞われた。1番の第1打を右に曲げてOBとなり、第4打もバンカーに入れた。まさかのトリプルボギー発進。それでも我慢強くパーセーブを続け、8番でピン上6メートルのバーディーパットをねじ込んだ。我慢のプレーを続けて通算2アンダーで、勝負のバックナインに入ったが、後半も苦しむホールが多かった。

 11番の第1打をバンカーに入れ、12番は1メートルのパーパットがカップに蹴られて2連続ボギーをたたいた。15、17番のパー5でバーディーを奪取。世界2位の意地はみせたが、優勝争いに加わることはなかった。

 第3日終了後、最終日のビッグスコアへ手応えを問われ「(パットも)絶好調というわけではないですけど、どうですかね…(ショットとパットが)かみ合えば。まあ、面白いかなと思う」と言い練習場へ移動。1時間ほど居残り練習したが、最終日のスコアに結びつかなかった。

 米ツアーでは誰もが知るところとなった練習の虫ぶり。米国の「ゴルフチャンネル」解説陣からは「マツヤマは現代のベン・ホーガンだ」との声も上がっている。5人しかいない生涯グランドスラム達成者であり、「近代ゴルフの父」として名を残したホーガンは驚異的な練習量も有名だった。「変に聞こえるかもしれないが、私は常にスランプだと思っていた。生涯で満足したショットは2つか3つだ」。そんな名言が語り継がれる完璧主義者と松山は比較されている。

 日本男子初のメジャー制覇という松山の夢は、来月10日開幕の全米プロ(米ノースカロライナ州クウェイルホローC)に持ち越された。会場は相性の良さを感じるコース。今季最後のメジャーで悲願に挑む。

 ◆ベン・ホーガン 1912年8月13日、米テキサス州ダブリン生まれ。29年にプロとなり、38年に初優勝。46年全米プロでメジャー初優勝。49年に濃霧で運転を誤ったバスと正面衝突。両足複雑骨折の重傷で、医師から再起不能と告げられたが、50年の全米オープンで奇跡の復活優勝。米ツアー通算64勝は歴代4位、メジャー通算9勝は同4位。近代ゴルフの理論を確立し、58年発刊の指導書「モダン・ゴルフ」は日本国内だけで100万人以上が手にしたといわれる。晩年はアルツハイマー病とも闘い、97年に84歳で死去した。