落ち着いた所作、普通にやれば勝てる/田中秀道の目

最終ラウンド1番 松山はティーショットを放つがOBとなる(撮影・狩俣裕三)

<米男子ゴルフ:全英オープン>◇最終日◇23日◇英国・ロイヤルバークデールGC(7156ヤード、パー70)◇賞金総額1025万ドル(約11億7875万円)◇優勝賞金184万5000ドル(約2億1217万5000円)

 松山英樹(25=LEXUS)が最初の1打に泣いた。1番のティーショットがOBとなるなど、3バーディー、2ボギー、1トリプルボギーの72で回り、通算2アンダーの278で14位。日本男子初のメジャー制覇という夢は、8月10日開幕の全米プロ選手権(ノースカロライナ州クウェイルホローC)に持ち越された。

 残念ながらOBとなった1番のティーショット。少し苦手な風向きだった可能性はありますが、松山選手はそういった難しい条件もクリアできるレベルの選手です。もしかしたら、あの位置に立った時に起こり得る自覚症状のない体の変化など、微細な部分まで克服していかなければいけないのが、メジャーの優勝争いなのかもしれません。

 右に曲がる傾向のあったショットは前日までと比べた時、スイングで足が動いているように見受けられました。トリプルボギーの影響で力が入ったのか、上半身が強すぎて、インパクトの瞬間に足の裏がめくれ上がる感じがありました。

 勝ちに対する意味では切り替えるのは難しかったでしょう。ただ、ゲームとしては切り替えられていました。3パットもなく、アプローチ力のすごさを含めグリーン上は最後まで素晴らしかった。パッティングは、ほぼ素振りをせずに打っていました。余計な情報を入れず、イメージしたものをそのままボールにぶつけるということで、安定させていたのかもしれません。

 結果を言い出せば切りはありませんが、今回の戦い方は最も“におい”がしていたと思います。落ち着き払った所作に、多少のミスを受け入れる気持ち、大きな波のないテンションなど普通にやりさえすれば勝てるという雰囲気がにじみ出ていました。いつ勝つんだろうというより、どのくらい勝つんだろうという空気さえ。僕は今回の試合が、これからのメジャーに対する一番の分岐点になりそうだと感じました。全米プロも期待は大です。また、玄人がゾクゾクするようなゴルフを見せてほしいですね。(プロゴルファー)