「流れ変えた」スピースVを呼んだキャディーの言葉

優勝し、カップにキスをするスピース(撮影・狩俣裕三)

<米男子ゴルフ:全英オープン>◇最終日◇23日◇英国・ロイヤルバークデールGC(7156ヤード、パー70)◇賞金総額1025万ドル(約11億7875万円)◇優勝賞金184万5000ドル(約2億1217万5000円)

 通算12アンダーのジョーダン・スピース(23=米国)が第1日から首位を守る完全優勝でメジャー3勝目。6人目の生涯グランドスラムへ、全米プロを残すのみとなった。

 スピースが長く語り継がれるであろうスーパーショットで窮地を脱した。

 3打のリードを失って迎えた13番パー4。打った瞬間に頭を抱えたドライバーショットは大きく曲がり、右の丘の斜面にある深いラフへ落ちた。打てる状況になく「アンプレアブル」を宣言。たっぷり20分かけてドロップする場所を探し、競技委員に確認した。「練習場はOBかい?」。選んだのは、カップと打ち込んだラフの後方に広がる練習場。近くにクラブメーカーのツアーバスも並ぶ平らな芝の上から3番アイアンを振り抜いてグリーン手前まで運び、最後は3メートルを沈めてボギーでしのいだ。

 スタートから4ホールで3つ落とした時、キャディーのマイケル・グレラー氏が励ましの言葉をかけた。「スーパースターの仲間だと思い出せ」。大会前、元NBAマイケル・ジョーダン氏、「水の怪物」マイケル・フェルプス氏(ともに米国)らと交流する機会があった。そして、79年大会の覇者セベ・バレステロス(スペイン)が見せた“駐車場ショット”をほうふつさせる一打。再びグレラー氏が語りかけた。「今、この瞬間に流れは変わったぞ」。14番からの4ホールで1イーグル、3バーディー。クーチャーを振り切った。

 12番で池に2度入れた16年マスターズの大逆転負けの悪夢を振り払うような1勝。24歳未満でのメジャー3冠はジャック・ニクラウス(米国)に次ぐスピード記録。8月の全米プロに勝てば、タイガー・ウッズ(米国)の24歳206日を抜く24歳17日の最年少グランドスラム。「生涯グランドスラムが目標。でも今は、この勝利を味わいたい」。27日に24歳となる若き名手は穏やかな笑みを浮かべた。

 ◆ジョーダン・スピース 1993年7月27日生まれ、米テキサス州ダラス出身。中学時代は野球チームで左投げの投手として活躍。左利きながらゴルフは右打ち。12年にテキサス大へ進学し、同年にプロ転向。19歳だった13年7月、ジョンディア・クラシックで初優勝し、米ツアーで82年ぶりの10代V。15年にマスターズ、全米オープンなどメジャー2勝を含む年間5勝で、世界ランク1位に。米ツアー通算11勝。勝負強いパットが武器。185センチ、84キロ。