しぶこ初夢 金メダル!世界1位!スマイル/新春

自ら「金」と書き入れたメダルを持ち笑顔を見せる渋野(撮影・浅見桂子)

東京オリンピック(五輪)で金メダル-。女子ゴルフの渋野日向子(21=RSK山陽放送)の新たな挑戦の年がスタートした。AIG全英女子オープンを制覇するなど大躍進の19年から、さらに目標を高く掲げる20年。五輪、21年からの米ツアー参戦への土台作り、さらに最終目標である5大メジャー制覇へ。渋野が熱い思いを語った。

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子どものころからの夢だった金メダルを実現させる年が明けた。小学生の時、テレビで見た北京五輪女子ソフトボール決勝。ソフトボール少女で投手だった渋野は、エース上野由岐子が掲げた金メダルに心を揺さぶられた。

「上野さんの金メダルを見て、私も強くなってこういう舞台で1番を取りたいと思った。それがゴルフで東京五輪に出場できるチャンスができて、日本で金メダルを取るところを見てもらえるのはすごいことだなと思う。それって、めちゃめちゃカッコいい」

19年の元旦は、岡山の実家近くの神社への初詣で「シード権が取れますように」とお願いをした。それが、1年で人生がガラリと変わった。初優勝が国内メジャーのワールド・サロンパス・カップという快挙から、8月の全英女子オープンに日本人として42年ぶりにメジャー優勝。かつて宮里藍や石川遼のブームを超える「しぶこフィーバー」をゴルフ界に巻き起こした。

「世界ランク1位になったのは、日本人では宮里藍さんだけ。私的にはゴルフ界で一番影響を与えた人だと思う。私も藍さんのように、なんならもっと藍さんよりもっと活躍できる選手になりたい。ゴルフも人柄も、誰からも好かれるような人になりたい」

直近の目標は東京五輪出場と金メダル。年間を通じては、21年に本格参戦を目指す米ツアーへ向けての土台作りだ。1月末からタイで合宿し、今季初戦は2月20日開幕の米ツアー、ホンダLPGA(タイ)となる。全英オープン優勝で今季の米メジャー全試合出場権も持っている。五輪出場資格は、6月29日発表の世界ランクで決まる。現時点の世界ランクでは、畑岡奈紗が6位、渋野が11位、鈴木愛が15位と、現時点で3人に五輪出場資格獲得の圏内に入ってきた。今年の前半は、世界ランクを上げるための戦いとなる。

「6月末までの試合は1試合もムダにできない。海外、国内でのメジャーで結果を出すこと。その他の試合もしっかり上位争いしたい。(五輪は)一番近いところにいるのが3人なので、3人で行くのがベストだと思う。メダルへのチャンスも増えるし、私的にも心強い。個人戦だけど、同じ日本代表としてぜひ3人で出たい」

五輪への思いは、自分のためでもあり、自分を支えてくれる家族やコーチのためでもある。

「父(悟さん)も学生時代に陸上競技(砲丸投げ)をしていていろんな大会、国体にも出ている。五輪というのはスポーツ選手の夢の舞台。五輪に出て一番喜んでくれるのは家族だと思うし、私も喜んでもらいたい。人のために頑張りたい。でも私のためにも頑張りたいです」

五輪、金メダル、米ツアー参戦の先にあるのは、恩師青木コーチから課された大きな目標だ。

「台湾の最終日の夜に、青木コーチから『辞めるなら、5大メジャーに勝ってからにしてくれ』って言われたんです。最初は何言ってんだこの人、って思いましたけど『日本人の中で今、一番近いんだぞ』と言われて。今は現実味はないんですけど、それをやって、最後の5個目勝ったときに引退しますと言ったら、カッコいい。それを目標に頑張ります」【取材、構成=桝田朗】

◆渋野日向子(しぶの・ひなこ)1998年(平10)11月15日、岡山市で3人姉妹の2番目として生まれる。8歳でゴルフとソフトボールを始める。小6でソフトボール投げ58メートルで県2位。ゴルフでは、中1から岡山県ジュニア3連覇。岡山・作陽高では全国高校選手権団体の部で優勝。18年2度目の挑戦でプロテスト合格。19年5月のワールド・サロンパス・カップでツアー初勝利。8月にAIG全英女子オープンで優勝。19年はツアー4勝を挙げ賞金ランク2位。ともに筑波大卒の父悟さんは砲丸投げ、円盤投げで国体2位。母伸子さんはやり投げで高校総体に出場。165センチ、62キロ。血液型AB。