河本結「世界一になりたいんです」/インタビュー

ゴルフノートを見せる河本結(撮影・益子浩一)

目指すは世界一! 女子ゴルフで今季から米ツアーに参戦する河本結(21=リコー)が、日刊スポーツのインタビューに応じた。世界ランクは日本人6位の62位。東京オリンピック(五輪)出場はまだ遠いが、大逆転での出場権獲得へ今月中旬に渡米し新天地での挑戦を始める。昨年、AIG全英女子オープンを制した渋野日向子(21)に続くメジャー制覇へ。詳細に目標をつづったゴルフノートを公開し、世界一への思いを聞いた。【取材、構成=益子浩一】

故郷愛媛で正月を過ごした河本は、拠点にする東京近郊に戻るとすぐに始動した。昨年末の米ツアーのQT(予選会)で9位に入り、今季から海を渡る決断をした。試合はもうすぐ始まる。QT資格での本格的な出場は3月以降になるため、まずはゲインブリッジLPGA(フロリダ州)の出場権を懸けたマンデートーナメントに参戦。日体大に在学する河本の取材は、校舎内の学食で行われた。

「小さい頃からの夢で、世界への憧れがありました。ゴルフを極めたい。それだけですね。日本でやる方が安定してお金は稼げる。向こうに行けばお金もかかるし言葉も分からないし、環境は厳しい。でも世界一になりたいんです。後悔をして生きたくない。一生のうちに頑張るのは、今だと思うんですよ。日本での安定が幸せではなくて、目標を持って頑張ることが私にとっての幸せなんです」

昨年8月に渋野が全英を制し日本中が盛り上がった。98年度生まれの同じ黄金世代。誰よりも悔しい思いをしたのは河本だった。全英の出場権は6月末のアース・モンダミンカップ終了時点で賞金ランク5位以内。だが高額賞金のアースで55位に終わり、4位に入った渋野に出場権を譲った。

「全英は見ていないです。寝ていました。心のどこかに、悔しさがあったんだと思います。あそこに立っているのは私のはずなのに…。そう思っていました。アースで順位を落としてしまったのは、初めてのレギュラーツアーで、連戦で疲れていた。心が沈んでいて、パッティングがダメになった。目の前のチャンスを、自分で逃してしまった」

18年は渋野とともに下部ツアーを戦い、河本が賞金女王に立った。19年は全英を機に、一気に渋野に先を越される形になった。互いに刺激しながら、一緒に強くなろうと努力をする。

「ゴルフは気の流れが大事なスポーツ。しぶこ(渋野)は、流れを全て引き寄せた。周りの人、みんなから応援されて『しぶこ、しぶこ』になった。本当は、悔しかったですね。でも日本人が全英で勝ったということは『私たちもできる!』と証明してくれたということ。あの時は流れを渡してしまったけれど、あれは私がもっと大きくなるための試練だと思っています」

ツアーを転戦しながら、時間が空けば日体大で授業を受ける。勉学に励む学生の一面もあるからだろう。ゴルフノートには平均ストローク、パーオン率、平均パット数など細かく目標設定をしている。片隅には「パター職人」と呼ばれる鈴木愛のパッティングを参考にした書き込みや、タイガー・ウッズのショートゲームの数値まで記してある。

「有言実行を大事にしています。だから過去5年くらいのランキングを調べて、細かく目標設定しているんです。19年は賞金ランク5位以内を目指していたのに、6位で届かなかった。クリアしたのはパーオン率くらい。70台を目標にした平均ストローク(71・07)も、平均バーディー数も、リカバリー率も悪かった。できると思って口にしているのに、自分自身の目標に負けているんです。いい時も、悪い時も成長しないと世界とは戦えない」

勝負の20年。どんな目標を描いているのだろうか。

「東京五輪出場はもちろん。心の中にはあります。これは言うと、みんなにバカにされちゃうから今まで言ったことがないんですけれど。グランドスラムを達成して、殿堂入りしたい。まずは米ツアーでシード権を取って、次に賞金ランク3位を目指す。高い目標を掲げて、1つずつクリアしていく。自分の中では、しぶこの次にメジャーを勝つのは私だと思っています。一緒に世界のトップを目指したい」

◆五輪出場権 6月29日発表の世界ランクで、各国上位2人に与えられる。同ランク15位以内に複数選手がいる国は、最大4人まで選出。日本勢は最新の世界ランクで15位以内に畑岡、渋野、鈴木の3選手がいるため現時点では3人が出場可能となる。国内ツアーより、米ツアーの方が世界ランクに準ずるポイント加算率が高く、昨年1月に同ランク561位だった渋野は、全英優勝で14位に急浮上。

◆契約 化粧品メーカー大手コーセーが、1月から河本とスポンサー契約を結んだことを発表。今後は同社ロゴを付けてプレーする。

◆河本結(かわもと・ゆい)1998年(平10)8月29日、愛媛県松山市生まれ。5歳で競技開始。松山聖陵高を経て、現在は日体大体育学部3年。18年夏に渋野とともにプロテスト合格。趣味は映画観賞、読書。愛読書は稲盛和夫氏の「心。」(サンマーク出版)。163センチ、58キロ。