五輪照準の鈴木愛「前半で3勝国内メジャーで勝つ」

賞金女王・鈴木愛が意地とプライドを持って臨む、東京五輪出場をかけたシーズンが開幕する(撮影・丹羽敏通)

昨年の賞金女王、鈴木愛(25=セールスフォース)が東京オリンピック(五輪)出場を目指し、開幕戦からスタートダッシュをかける。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、無観客で開催される3月5日開幕のダイキンオーキッド・レディース(沖縄)から始まる今季前半戦で3勝を目標に掲げた。約3週間の米アリゾナ合宿では、例年以上に早く仕上げ、満を持して開幕戦に臨む。鈴木に五輪イヤーへの意気込みを聞いた。【取材・構成=桝田朗】

女王は本気だ。鈴木は1月23日から、米アリゾナ州フェニックスで行われた契約するPINGの合宿参加。2月18日に帰国するまで、午前中は下半身や腹筋を中心に鍛え、午後は宿舎に隣接する施設でスイング、パットを練習した。

鈴木 PINGの合宿は今年で7回目ですけど、今までで1番か2番目ぐらいに仕上がっています。下半身は8種目のトレーニングを1クール3日間のメニューでやった。午後はアプローチ、ショット、パターですね。特にショットが良くなった。スイングの時に左右に動かなくなったし、方向性も、自分が求めているショットが多く出てくるようになった。例年は開幕までに50%ぐらいだけど、今年は80~90%に仕上がった。

早く仕上げるのは、6月29日の五輪ランキングで、東京五輪出場が決まるからだ。

鈴木 前半戦の成績で五輪出場が決まるので、前半で3勝はしたい。それも、勝つ大会によるから、ポイントが大きな国内メジャー(ワールド・サロンパス・カップ)や海外メジャーで勝ちたいですね。勝てなくてもポイントを落とさないようにやりたい。

東京五輪への思いも強くなっている。24日発表の最新世界ランキングは15位。5位の畑岡奈紗、11位の渋野日向子に続く日本勢3番手。今季から米ツアー参戦の河本結や、稲見萌寧といった若手が後方から迫る。

鈴木 今まで、あまり大きく考えていなかったけど、自国開催の五輪は私が現役でいる間に、もうない。こういう試合に出てみたいと思うようになった。去年はケガなどで試合を休んだりして、スポンサーや応援してくれる家族やファンに迷惑をかけた。良い成績、メダルを取って恩返ししたいという思いが強い。

お隣の韓国では、日本以上に熾烈(しれつ)な五輪出場権争いが続く。リオデジャネイロ五輪金メダルの朴仁妃さえ、今季は開幕戦から「2勝」をノルマにスタートダッシュをかけ、16日のISPSハンダ女子オーストラリア・オープンで優勝。そんな姿に刺激を受けた。

鈴木 優勝した試合を米国で見た。スキがなく、ミスしても取り返してくる。五輪に出てくるだろうなと思うし、出たらメダルを取ると思う。一緒に回ってみたい。

昨年は6月までに3勝、18年は4勝と、鈴木は前半戦に強い。今年は渋野が2月にタイ、シンガポールでの米ツアー2戦(いずれもコロナウイルスの感染拡大で中止)を選択したが、鈴木はあえて出場を見送り、国内ツアー開幕戦に照準を合わせてきた。

鈴木 (開幕戦の)ダイキンは、あんまり相性が良くないですけど、前半戦は相性が良くて、西の試合好きなんです。

例年以上の仕上がりなら、7勝を挙げて賞金女王を獲得した昨年終盤のような、強い鈴木が開幕戦から見られるかもしれない。

◆鈴木愛(すずき・あい)1994年(平6)5月9日、徳島県生まれ。11歳からゴルフを始め、09年に中学生で四国女子アマ選手権で優勝し、本格的にプロゴルファーを目指す。倉吉北高に進学。13年プロテストに合格し、14年9月の国内メジャー、日本女子プロゴルフ選手権で初優勝。17年に年間2勝で初の賞金女王を獲得。19年には7勝を挙げ、2度目の賞金女王に輝いた。プロ通算16勝。155センチ、55キロ。

◆東京五輪出場への道 東京五輪の女子競技は8月5~8日、埼玉の霞ケ関CCで開催される。出場60人で行われ、女子は6月29日時点で国際ゴルフ連盟が定めた五輪ランキング(世界ランキングをもとに算出)上位15人が自動的に出場権を得る。15人中、各国最大4人までが出場権を得ることができ、15位以内に1人しか入っていない国は、16位以下60位までの最上位1人が出場できる。15位以内に1人も入っていない国は、16~60位までの最大2人までが出場可能。その他、5大陸ごとに各1人の出場枠がある。

◆鈴木のライバル 米ツアー参戦4年目を迎えた畑岡奈紗(21)は開幕戦のダイヤモンドリゾーツ・チャンピオンズから2大会連続2位。世界5位と、五輪出場に最も近い位置にいる。昨年、AIG全英女子オープンを制し、一気にポイントを稼いだ渋野日向子(21=サントリー)は、出場予定だった米ツアーの2戦が中止となった。世界11位で、難しい調整の中、3月5日のダイキンオーキッド・レディース(沖縄)が今季初戦となる。五輪出場を目指し、今季から米ツアー参戦の河本結(21=リコー)は、初戦のゲインブリッジで8位と大健闘。その後は2戦連続予選落ちで世界61位。昨年1勝で日本ツアーの賞金ランキング13位の稲見萌寧(20=都築電気)も世界59位から五輪出場を目標に、国内開幕戦から「全戦勝利」(稲見)を目指し始動する。